自動車の走行税とは?特徴や導入された場合のメリット・デメリットを紹介
自動車税は、国の歳入を確保するため、自動車の所有者に課税される税金です。税額は排気量に応じて決まりますが、近年「電気自動車」「ハイブリッドカー」「シェアリング」などの普及により税収確保が難しくなっています。
この問題を解決するために、政府は走行距離課税(走行税)という新しい税制の導入の検討を始めました。走行税では、車の所有者が走行した距離に応じて課税されます。
税制は自動車の維持費に関わる重要な要素ですが、走行距離課税制度の詳細についてはよく知らないという方は多いのではないでしょうか。この記事では、走行税について詳しく解説します。
※目次※
・走行距離課税制度(走行税)は、車の使用量が少ない人は税金の支払いが減る可能性がある
・アメリカ(オレゴン州)とニュージーランドでは、試験的に走行距離課税制度(走行税)を導入している
・走行税の導入はさまざまな意見があり、本格的な導入時期は決まっていない
走行税とはどのような税金?
走行税(走行距離課税)とは、車の走行距離に応じて税額が決定される税金のことです。2022年現在、日本ではまだ走行税は導入されていません。
走行税の可能性については、仕事などで長距離を移動しなければならない人に不釣り合いな影響を与える可能性が高いので、不公平ではという意見もあります。一方で自動車ではなく公共交通機関を利用する機会が増えるという意見もあり、さまざまな意見が出ているのが現状です。
日本で走行税を導入するかどうかについては、明確な決定はでていません。ですが、政府はあらゆる選択肢を検討中であり、導入される可能性もあるのが走行税になります。
走行税が検討されるようになった背景
走行距離課税の導入を検討するにいたった背景には、昨今の若者を中心として広がる自動車離れやカーシェアリングの普及による自動車保有者の減少、ハイブリット車の増加、電気自動車の普及といったものがあります。
電気自動車の場合、排気量はゼロです。排気量ごとに定めた現行の自動車税制度では最も低い1リットルの2万9,500円(2019年10月1日以降登録の場合には2万5,000円)となり、これ以上の税収は見込めません。
またハイブリット車は以前よりも格段に走行する姿が見られ、普及率は飛躍的に上昇しています。電気自動車やハイブリット車は燃費が非常によく、今後も普及が進めばガソリン税の税収確保が難しくなります。その打開策として政府が考案したのが走行距離課税です。
走行税が導入された場合のメリット
走行距離課税の導入は、燃費が格段に向上したハイブリット車や電気自動車の普及によって減った税収益を増やすことを目的としています。しかし、まだ検討段階で、実際に可決・施行にいたるのかは未定です。
ここでは、実際に走行距離課税が導入された場合、自動車保有者にどのようなメリットがあるのかについて見ていきましょう。
走行距離が短ければ税金が安くなる可能性がある
走行距離課税は、自動車で走行した距離に応じて税額を決める課税方式です。つまり、走行距離が短ければ短いほど税金は安くなります。自動車は所有しているものの週末にしか乗らないといった利用頻度が比較的少ない方にとっては、新税制度導入は有利に働くでしょう。
通勤や日常生活で自動車を必要としない都市部に住む方なら、今まで支払ってきた自動車税よりも大幅に減税となる場合もあります。
排気量が大きい車は減税になる可能性がある
現在の自動車税制度では、排気量が大きい車には重い税負担がのしかかっています。しかし、走行距離課税が導入されれば排気量別課税は撤廃されるため、車の乗り方によっては減税となることもあるでしょう。
自家用車だけでなく、運送や流通業界で多く使用される大型車の場合も同様です。現状排気量の大きい輸送車は自動車税の負担額も大きいですが、新税制度の内容によっては減税となる可能性があります。
エコカーからも税金を徴収できる
現在、電気自動車(EV)ハイブリッド車(HV)プラグインハイブリッド車(PHEV)などのエコカーには減税措置がとられています。減税に関しては、全ての車種から平等に税金を徴収すべきと感じる人もいるのが現状です。
しかし走行税が適用されれば、平等に税金を徴収ができるようになります。もちろん、この提案には反対意見もあるため判断は複雑です。すべてを考慮した上で決定することが重要になってきます。
車を所有しやすくなる
「車の購入費用」「ガソリン費用」「メンテナンス費用」「税金」などの費用が大きく購入を断念する方もいると思います。車を持てない理由が、税金の負担が大きいからと感じている人もいるかもしれません。
現在の税制では、自動車の使用状況や排気量に応じて一律に課税されるため、たまにしか乗らない人にとって不公平感があるといわれています。走行税が適用されると走行距離に応じて課税されるため、たまにしか車にのらないけれども所有したいということにもつながるかもしれません。
走行税が導入された場合のデメリット
自動車に乗る機会が少ない都市部の方や排気量の大きい車に乗っている方にとっては有利に働く可能性がある走行距離課税ですが、デメリットにはどのようなものがあるでしょうか。ここでは、走行距離課税導入によるデメリットについて詳しく見ていきます。
地方の負担が増える
地方に住む方は、通勤や買い物で自動車を利用する頻度が高い傾向にあります。必然的に走行距離が長くなるため、走行距離課税が導入されれば今までよりも高い税金を納めなくてはならない人が増えるかもしれません。
走行距離課税は、日常生活での自動車への依存度によって課税額が大きく変わります。そのため、移動手段として日常的に車を利用する地方エリアに住む方には、今まで以上の税負担がのしかかるでしょう。
交通・運送業界にダメージ
走行距離課税導入は、走行距離が長い交通業界や運送業界にとっては大きな痛手となります。車一台ごとの課税額の変化は少なくても、数十台所有している会社であれば負担は相当な金額となるでしょう。
実際に走行距離課税が導入され増税となれば、重くなった税負担分を補うためにタクシーやバスの運賃が値上げされる可能性は十分に考えられます。
公平に課税するのが難しい
走行税の導入が難しいといわれている理由のひとつは、技術面やコスト面で公平性の確保ができないことです。GPSやメーターを使って走行距離を把握する方法もありますが、それぞれに課題があります。
GPSを利用する方法は、GPS装置の設置に時間とコストがかかるため、全ての車両に導入することは簡単ではありません。また、GPSによる追跡は不正確な場合もあり、正しい金額を請求することも難しくなる可能性もあります。
メーターを使って走行距離を計測する場合は、メーターの改ざんをしてしまうかもしれません。このように、走行税の導入にはいくつかの問題をクリアする必要があります。
走行税を導入している国家はある?
すでに走行税を導入している国・地域もあります。現在、走行税を導入しているのは、ニュージーランドとアメリカ(オレゴン州)です。日本もニュージーランドとアメリカ(オレゴン州)の動向を見ながら、走行税の導入を検討しています。
ニュージーランド
ニュージーランドではRUCと呼ばれる新しい道路使用料制度(走行税)が実施されています。ガソリンの代わりにディーゼルを使用する場合は、この道路使用料を支払わなければなりません。
RUCはディーゼル車や大型自動車が対象で、2022年9月時点で割引期間(2022年4月21日から2023年1月31日までの RUC料金の36% 割引)が適用され、0.049 NZD/km(3.5t以下の車)になります。通常料金は0.076 NZD/km(3.5t以下の車)になり、車の重量によって金額が変動する仕組みです。
RUCのライセンスを購入するには、使用する予想走行距離分の料金を前払いする必要があります。実際の走行距離が予定より多くなった場合は最度申請し、少ない場合は返金を受ける仕組みです。
RUCは、走行距離を計測するためのレコーダーを取り付けることで不正防止に対応しています。
アメリカ(オレゴン州)
アメリカ(オレゴン州)では、走行距離に応じて自動車に課税するプログラムを実施しています。このプログラムはOReGOと呼ばれ、1マイルあたり0.019USD(1.9セント)のマイレージ税と、1ガロンあたり0.38USD(38セント)の燃料税を支払う仕組みです。走行距離は車両にマイレージレポートデバイス(走行距離報告装置)を取り付け、集計することで徴収されます。
2022年9月現在OReGOでは、試験的に登録者を募集しながら走行税を導入しており、OReGOに登録した人は電気自動車の登録料を割引してもらえるなどの控除を受けられるようです。
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まとめ
将来的に走行距離課税が導入されてしまうと、人によっては自動車に関連する税金が高くなることが考えられます。まだ導入されると決まったわけではありませんが、そのときに備え維持費を考慮した車選びも必要です。
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