SUZUKI LAPIN|カーライフ

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オトコに比べてオンナの夢や目標というものは、やっぱり具体的だと思う。男子がF1ドライバーやサッカー選手! と口走るのに対し、女子の夢は看護師さんや花屋さんなどずっと明確なイメージのもとに成り立っている。
自分の夢や目標を掲げて暮らしていくことは同時に不憫さもつきまとう。夢や目標を叶えられない不安、現状の苛立ち。それは青年期特有のものかも知れないが…。そしてここに、女性が夢見る職業のひとつに近年加えられた「メイク・アップ・アーティスト」を目指す女のコがいる。

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名古屋市の美容専門学校に通う、塚原亜衣さん。彼女の将来の夢はメイク・アップ・アーティストになること。「人それぞれに見合うメイクってやっぱりあるんです。その人にふさわしいメイクをすれば、美しくなれる。そう思っているからこそ、女性が綺麗になれるお手伝いができる仕事に就きたいって思ってます。それが自分の将来就きたい仕事ですね」。ただのメイク屋さんではない。彼女が目指すのはプロのメイク・アップ・アーティスト。夢は海外、そして映画やショーの世界。華やかだけど、もちろん容易ではない世界でもある。

彼女が目指すメイク・アップ・アーティストは、メイクにおける基礎的な知識はもちろん、映画やショーにおけるモデルとの対話も必要不可欠となってくる。「相手とコミュニケーションをとることは大切だとわかってます。個人によってその日の肌の質感も異なりますから。それを瞬時に感じ取って、その日、その時間に最適なメイクを選びとってあげる必要があります。だから、語学だって学ぶ必要があります」。忙しい専門学校の時間の合間を縫っては、語学の勉強も怠らない彼女。いつかその時間が活かされる時間を夢見て。

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もう一つ、メイク・アップ・アーティストという職業で彼女が必須だと考えていることがある。例えば映画に登場する役者さんのメイクを担当することになったなら。そこには、ただ「美しくするだけのメイク」は必要とされていない。映画が細切れのシーンで構成されるように、そのシーンごとに見合ったメイクが存在する。このシーンだからこそ、このメイクでないといけない。そんなメイクだ。
だからこそ彼女が目指すものは「物語において意味を持ったメイク」でもある。

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ファッションショーなどでは、さらに異なるメイクの技術が必要となってくる。時間に大きく制限のあるファッションショーの世界。彼女の夢は、そこでも活躍ができることだ。ショーでのメイク・アップ・アーティストというものは、モデルが着用する衣裳に合わせたメイク術が必要となってくる。また、限られた時間の中でモデル、舞台演出の監督、スタイリストらと綿密な打合わせを行った上でメイクを施していくのだ。「自分は社交的だし、大丈夫」とさらり。彼女の物怖じしないその性格が、舞台という未知のステージでいかされる日はきっと近い。

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母親は美容部員として活躍していた。小さい頃にその背中を見て育った彼女。「すごい天然キャラで、いつも一緒にいる」と話す母親とは、今でもよく一緒の時間を過ごす。小さい頃に見てきたのは、美容部員だった母親の仕事道具であるメイクの道具たち。中学生の頃、彼女もごく普通の女のコが興味を持つようにメイクに興味を持ち始めたという。小さい頃に目にしたメイクというものは、いわば「魔法」。メイク道具と知識があれば、自分も母親のような「魔法みたいなメイクが使える」。彼女の願いは、そこから始まっている。

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多くの女性に支持されるファッションブランド、ジル・スチュアート。そんな有名ブランドの新作アイシャドーが、彼女の心を捕らえている。
もちろんその日のスタイリングによって、カラーの異なるアイシャドーを使うが、例えばこの日のようにフロリックのスプリングニットをトップスを持ってきたなら、シャドーやチークを茶系で統一。ホワイト×ブラックのボーダーに合わせ、大人っぽく上品な色目を合わせる。ピンクなど派手な色目のものは御法度だ。

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愛車はスズキのラパン。彼女にとってクルマはメイク道具を収めた箱とも共通する部分が多い。ラパンという名の魔法の箱もドアを開けた瞬間に塚原さんの気持ちのスイッチを切り替えてくれる。落ち込んでいる時にはそれを忘れさせてくれるように、気分がノッている時にはステアリングを握る手も自然と軽快になる。

ラパンの助手席には母親が陣取る機会が多い。ショッピングへ、自然へ、そして街へ。ラパンの車内は、家族との大切な時間を過ごす場所でもある。彼女にとって最初に手にいれたクルマであるラパンとはなんだろう。「いろんなモノを載せられる、素敵な移動する箱かな。好きな音楽を聴いて、目的地まで行ける自由度の高さも好き。クルマを手に入れなければ、味わえなかった感覚だと思います。あと、メイク道具も載せてます。たまには目的地着いたらクルマを停めて、ササッと車内でメイクを済ませて…なんてこともしちゃうんです」。

今の走行距離はまだ4,000kmと少し。クルマの走行距離が伸びていくほどに、彼女は夢へと近付いていくのかも知れない。

メイク・アップ・アーティストと、そしてもう一つ。彼女が胸の内に温めている思い。それは母親と同じ美容部員という道だ。映画やショーの世界のようなきらびやかさは無いかもしれない。けれど、百貨店などで化粧品を販売する母親と同じ仕事という選択肢も彼女には捨てがたい。さらに美容部員ならば、より多くの人と関わり合いが持てるかも知れないとも、彼女は考えている。

「メイク・アップ・アーティストは言ってみれば、4つ星が付くような高級フランス料理のお店。限られた人しか、体験できないことだと思う。けど、私の中で美容部員はもっと気軽なファミレスみたいな感じ。どっちが良い悪いなんかじゃなく、より多くの人に綺麗になってもらいたいと思う今の気持ちを考えると美容部員という選択も捨てがたいものなんです」。

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彼女は少し前まで、友達の母親がオーナーであるカフェ「CONPECHI」で働いていた。お店に着くと、まっさらな白いシャツに腕を通して黒いエプロンを腰に巻く。ヨーロッパのカフェで見かけるギャルソンへと彼女が変貌する瞬間だ。主な仕事はウェイトレス。忙しいランチから、のんびりした時間が流れるティータイムまでテキパキと仕事をこなした。長い時間をアルバイトとして働いたから、いろいろと学んだことも多い。
「とってもオシャレなお店だから、訪れるお客さんも感性の高いオシャレな人が多かった。だから、そういう人たちとお話ししたりしているだけで刺激になる。接客業を学べたことは大きな貯えにもちろんなっているけど、それ以上にいろんな人と出会えたことが大きかった」。彼女は自信を持って答えてくれた。

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学業が忙しく、今ではアルバイトを一旦お休み。けど、またいつか時間があればカフェの中を心地よい忙しさを感じながら動き回りたいとも思っている。
休日には母親を伴って、お客様としてカフェを訪れる。口をつくのは、学校のことやお店を出た後に向かう次の行き先のこと、家族のこと、そして将来のこと。その時間は母親との距離を近付けてくれる大切な時間。
「母親とは何より話が合うから、一緒に過ごして楽しいって思える。だから私に関する大抵のことは知ってるだろうし、これからも何でも聞いて欲しいし、私も報告を欠かさないと思う」。
働いていたら感じられなかったであろう穏やかな時間を、彼女はカフェで感じている。

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カフェCONPECHIでは、注文を受けてから1杯ずつドリップ珈琲をドリップしてから煎れる。「お店では深煎りや浅煎り、それにフレンチの3つから選べます。先輩やオーナーに教えてもらって、一からみっちりと勉強しました。こういうお店だからなのか、お客さんも一杯の珈琲のためにちゃんと待ってくれるし、こちらも丁寧に煎れたものを提供できる。珈琲を待つ時間が存在するなんてこと、それまで知らなかった」。珈琲だけでなく、贅沢な時間の使い方も学んだという彼女。「豆やブレンドごとに香りも違うんだって、経験を積むと分かってくるんですよ!」。接客業のノウハウだけでなく、技術面でも彼女にとって大きな収穫があったようだ。

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カフェの使い方はそれぞれ自由で、その懐の深さもカフェの魅力のひとつ。彼女はアルバイトとして勤務していた時と、そして母親と一緒にお客さんとして訪れた時の流れる時間の違いを身を持って知った。「自分が働いていた頃には、たくさんの人が訪れる出会いの場として存在していたんです。働くという大変さを知ると同時に、私と訪れる人とを結び付けてくれる引力もある場所だったんです。そして、お客さんとして席に座っているとゆったりと流れる時間も知りました。あぁ、みんなこの時間が好きで訪れていたんだなぁ、って。自分がお客さんの立場になることも重要だとわかりました」。カフェの魅力、彼女は身を持って再確認したようだ。

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ウェイトレスとして貴重な時間を過ごしたカフェ。珈琲も大好きだが、彼女が訪れると必ずオーダーするもの、それはスイーツ。女性にとって必要不可欠なメニューでもある。

シフォンやロールケーキが並ぶ四種盛りプレートは、CONPECHIの中でもイチオシのスイーツだ。甘くとろけるスイーツは彼女に幸福な時間を運んでくれる。その時間を通じて、彼女は様々なことを母親やいろんな人と話し、そして学ぶ。時にアドバイスを、時に叱咤激励を受けることもある。いくつかのケーキやアイス、そして焼き菓子が運んでくる時間を彼女は愛おしく想っている。なぜならスイーツを食べる時間は時に将来のこと、そして今のことを教えてくれる。共にテーブルについた、かけがえのない人と一緒に。

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小さい頃の彼女にとって美容部員だった母親が使うメイク道具は、どれも魔法の道具だった。中学生の頃に興味を持ち始めて、次第に自分でもメイクを施す年代となったら、そのメイクというものが将来の目標としてすぐ側にあった。
「美容部員だった母親という存在が、メイク・アップ・アーティストを志すキッカケになったことは間違いないです。自分が見よう見まねで初めて自分で自分にメイクした日のことは今でも覚えているんです。誰だって女性なら、メイクで美しくなると嬉しいものだし」。

今でも母親が使っている化粧代に座ったことを覚えているという彼女。その日から、メイク・アップ・アーティストへの道が始まっていたのかもしれない。

「今はメイクの基礎を学ぶことで精一杯。けど、これからのことを考えると知識だけじゃダメなんですよね。道具を揃えていくことはもちろん、少しでも現場に立って学んでいかないといけないし。やらなきゃいけないことはたくさんあります。でも、スタートラインの手前ぐらいには着けたかな(笑)」。

スタートラインにたったなら、42.195kmよりさらに長い距離が待っている。

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未来に向けて揺れ動く想い。それは青年期ならではの、誰しもが持つごく正常な心の揺れ。メイク・アップ・アーティストという夢と、今の自分がいる場所。その距離を考えると時々、胸がこわれそうになる時だってある。
「けど、それはきっと同年代ならみんな同じ。今はそこに向かって進むだけ」。不安や悩みを抱える日々が続いても、彼女がメイク道具を手放す日は、きっとこない。

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Photographs by Takayo Nishiwaki Text by Eiji Kito Creative Direction & Art Direction by Akihiro Imao

 

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