カーライフ

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Volkswagen New Beetle

ロック・テイスト溢れるとんがったファッションと髪型。北川さんのファーストインプレッションは率直に書くならば、「ホールでのライブがハネた後のバンドマン」、そんな印象を持った。彼女は名古屋学芸大の4年生であり、映像メディア学科にて写真を専攻する学生だ。ちょうど卒業制作展の準備に追われるように、毎日カメラを携えては被写体となるべきもの、そしてイメージを形にできる術(すべ)を探すことに奔走していた。忙しいであろう中で話を訊いたのだが、一つひとつの言葉を選び丁寧に応えてくれた。そんな真面目で優しい姿が、新しい彼女の印象として浮かび上がった。

大学に入ってから本格的に学びだしたという写真。愛用するカメラは日本が世界に誇るブランド「キャノン」のEOS-Kissだ。それまで特別な写真に対する思い入れはなかったそうだが、最初の頃に行われた講議で彼女の考えは変化する。「絞りとかシャッタースピードとか、もう最初はチンプンカンプンで(笑)。講議ではライティングを覚えるために野菜などの静物から練習したんですが、人によって同じ対象を撮ってるのに表現の仕方が全然違うんです。それに驚いたのと同時に、写真って奥が深い表現手段だなぁ、と思ったんです」。

学校での展示会などに合わせて作品を撮っている北川さん。「いままでに最高と思える一枚は」の問いには、しばらく考えたあとでこう答えてくれた。「3年生の時にゼミ展で撮ったものですね。明確な課題はなくって、個人の感性に任せるといった内容でした。私は友達に手伝ってもらって、人物写真を撮ろうと決めてました。笑顔とかの明るいものではなく、黒い布で背景を囲ってその人の内面までも表現できるような不思議な感じの一枚にしたんです。それは評価されたし、一番思い出に残っている一枚です」。

多感な思春期に誰もが通るように、北川さんはいろいろな自己表現方法に触れ、実際にそれを取り入れてきた。写真もそのひとつだ。対象となるものは無数にある。彼女が一番興味を惹かれるものは何だろう。「ひとまず技術的なことは置いておくとすると…(笑)。難しいけれど、それでもやっぱり人物ですかね。仲良しの友達も、初対面の人も、年上も年下も関係ないですからね、ファインダーを覗いている間は」。カメラを介して存在する撮影者と被写体という純粋でわかりやすい関係に、彼女は居心地の良さを感じているのだろう。

「一番楽しいこと、はまっていることは間違いなく写真です」。迷いなく答えてくれる彼女、大学でみっちりと写真を学んでいるのだから、将来はやはりその道に進むのだろうか。「それはないんです。写真は大好きだからこそ、それをあえて仕事にしたくないというか…。もう一つ、昔からやりたいと考えていた将来の目標があるんです」。彼女は自分の父親が起こしたアパレルの会社に進むことを決めていた。だから、毎日カメラを持って写真に触れられるのは学生時代の今だけかもしれない。彼女は貪欲に最後の展示会に向けてシャッターを切っている。

写真の前に、彼女が出会った表現手段が「音楽」だった。ハードロックのさらに延長線上にあるジャンル「メタル」。現在も世界公演を敢行するなど精力的な活動を続けるジャパニーズメタルバンド「DIR EN GREY」のポスターを、彼女は小学6年生の頃に見て衝撃を受ける。今から10年前、1998年のことだと言う。「そのポスターはメンバー5人の顔が大写しになっていて、ヴィジュアルともにすごいインパクトがありました。それをきっかけに彼らの音楽に…、というか音楽そのものにはまっていった気がします」。

当時、DIR EN GREYは「BA-TSU(バツ)」というファッションブランドとコラボレートし服や小物類を販売していた。メンズ・レディスを扱い、パンキッシュなテイストで知られるBA-TSUは写真にあるスタジャンなどを手掛けていた。写真の1着は北川さんが当時、購入したもの。肩口にある白のラインと背中にある可愛いドクロマークが気に入った。愛着があるから当然もう着られなくなった現在でも、こうして大切に取っておいているのだとか。この時に好きになった音楽とファッションの嗜好は、今でも北川さんにしっかりと息づいている。

協力:ライブハウス[キャスパー]

小・中学校と聴くだけだった音楽だが、高校生になった彼女はエレキギターを手にする。メタルバンドもロックバンドと同様にギター、ベース、ドラム、ヴォーカルで編成される。エレキギターを手にいれた彼女は、DIR EN GREYをはじめ様々なバンドの曲をなぞるように聴きはじめる。ギターのコード進行を左指で覚え、右手ではピッキングを覚える。新しいリフとの出会いは練習への刺激となり、次第に友達も巻き込んでの練習は放課後の定番となった。自宅や時には貸スタジオで、心地よく音楽が奏でられれば場所はどこでも構わなかった。

演奏にのめり込んだけれど、高校卒業と時を同じくして徐々に「音楽」は演奏するものから聴くものへと戻っていった。「ライブホールなんかで、お客さんの前で演奏できたらすごく気持ちいいとは思う。ギターでもヴォーカルでも、リズムを刻むベースでもドラムでもいいから思いきり大きな音を奏でたいという希望もあります。だから高校の頃にそこまで経験できなかったことは、ちょっぴり残念かもしれませんね。でも、音楽はずっと側にあるものだし。ひょっとしたらステージに立つ機会もあるかも知れない。それはきっと、『いま』ではないだけで」。

では、いずれバンドの一員として趣味でステージに立つ日が来たらどんなジャンルでどんな音楽を聴かせてくれるのだろうか。「やるのは、やっぱりメタルかロックですね。聴いてて気持ちがスッキリするし、演奏する方がそう思うんだから聴くお客さんだったらさらにスッキリするかも(笑)」。スリップ・ノットやオフ・スプリングなどが今の彼女の毎日をヘビーローテーションで彩るバンドだとか。新しいバンド、新しい曲に触れると心がときめく。「いい音楽を聴くと、やっぱりいいなぁと素直に思えます。聴いていないだけで、もっと自分にフィットするジャンルもあるかも知れない」。音楽は北川さんにとって、表現手段というフィールドよりもっと身近な存在になった。

演奏にのめり込んだけれど、高校卒業と時を同じくして徐々に「音楽」は演奏するものから聴くものへと戻っていった。「ライブホールなんかで、お客さんの前で演奏できたらすごく気持ちいいとは思う。ギターでもヴォーカルでも、リズムを刻むベースでもドラムでもいいから思いきり大きな音を奏でたいという希望もあります。だから高校の頃にそこまで経験できなかったことは、ちょっぴり残念かもしれませんね。でも、音楽はずっと側にあるものだし。ひょっとしたらステージに立つ機会もあるかも知れない。それはきっと、『いま』ではないだけで」。

では、いずれバンドの一員として趣味でステージに立つ日が来たらどんなジャンルでどんな音楽を聴かせてくれるのだろうか。「やるのは、やっぱりメタルかロックですね。聴いてて気持ちがスッキリするし、演奏する方がそう思うんだから聴くお客さんだったらさらにスッキリするかも(笑)」。スリップ・ノットやオフ・スプリングなどが今の彼女の毎日をヘビーローテーションで彩るバンドだとか。新しいバンド、新しい曲に触れると心がときめく。「いい音楽を聴くと、やっぱりいいなぁと素直に思えます。聴いていないだけで、もっと自分にフィットするジャンルもあるかも知れない」。音楽は北川さんにとって、表現手段というフィールドよりもっと身近な存在になった。

将来は父親が代表を務めるアパレル企業に就職を…。そう考えていた北川さんに、転機が訪れる。それは家族からのこんな助言だった。「いまの会社は、自分の父親もいてさらに姉や兄も働いている。入ることはできるが、すんなりとひとつの会社に入るよりも社会勉強をした方がいいのでは…」。この言葉を受けた北川さんは、悩んだ末に別の会社の採用試験を受けることに決めた。そして、就職活動を経て内定をもらったのはなんととある地方銀行。「イメージと違う!? あ、よく言われるから大丈夫(笑)。どうせなら、思いきり自分の目指す方向とは違う会社に入った方がいろんなことを学べるからと思って。なので'09年の春からは銀行員になってるんです!」。彼女の振り幅と大胆さ、迷いのなさに感服。そして見事に内定を勝ち取るあたりに、見た目の印象とは違う芯の強さを感じた。

フォルクスワーゲンが作り上げた歴史的名車であるビートルを、現代の技術でさらにブラッシュアップしてリリースされたモデル「ニュービートル」。丸みを帯びたエクステリアのデザインは、世界で一番カワイイクルマといっても過言ではない。北川さんの駐車場には母親と共有して使う、黒のニュービートルがいる。「停まってるんじゃなく、いてくれるとか待っててくれるという表現がピッタリ。そんな雰囲気のクルマは他にないし、お母さんとどこかに出掛ける時はいつも交代で運転してるんです」。休みの日には、お母さんと過ごす時間が長い。「のんびりとご飯食べにいったり、お茶しに行ったりしてます。ビートルは気持ちよく走ってくれるから長く走っても疲れないから好き」。ブラックで統一されたインテリア、北川さんのファッションのテイストとも合っているのは、偶然か必然か。クルマとオーナーの出会いは、だから面白い。

中も外もブラックで引き締めたニュービートルは、カワイイながらもキリッとした雰囲気が印象的だ。「クルマも大事だけど、意外といつも持って歩くクルマのキーも重要だと思います。みんなの目に触れる上に、失くしちゃいけないものだからウォレットチェーンに付けて持ち歩いてます」。チェーンには自宅の鍵などファッションのアクセントにもなるシルバーアイテムがたくさん。それと彼女がアルバイト先で購入したウォレットは、これまたブラックの石である「オニキス」で飾られる。手彫りの模様が入れられた茶色の一品は、もちろんこの世に一つだけ存在する北川さんだけのもの。自分のファッションに合わせてチョイスしたウォレットやシルバー系のアクセサリーたち。それらと並べても自然と溶け込んだ雰囲気を醸し出すフォルクスワーゲンのキー。
「いいものは何と合わせてもいいなぁ、ってこれを見ていて思いました。このキーをここまでロックな感じで合わせてる人は少ないかも知れないけれど(笑)」。

協力:アルズニ イオン各務原店

いろんな表現手段と出会い、そこから多くを学んできた北川さん。一番最初の就職先には、また違うステージを選択した。けれど、最終的な目標はあくまで自分の父親の会社で働くことだ。「カシミアやレザーを輸入して業者の方に卸したり、直接買い付けに行ったりしている会社なんです。毛皮のコートを販売したり、有名な国内デザイナーさんにデザインをお願いして自社の商品を販売したりもしてます」。では、北川さんの「入社後」のイメージは出来ているのだろうか。「いろんなことを手掛けている会社なんですけど、私は商品を型紙から起こして実際に商品として形にまでするパターンナーになりたいって思ってます。いまのアルバイトは、そのための土台づくりかな」。北川さんは現在、名古屋市内をはじめ全国に店鋪を展開し主にレザー製品などを扱うアルズニにて働き、商品知識や接客業の「イロハ」を吸収している。

アパレルの仕事と一口に言っても働き口は複数ある。では、なぜ北川さんはこのアルバイト先を選んだのだろうか。「自分の好きなレザー製品をたくさん扱っていたこと。それと従業員の服装や髪型については自由だったんです。自分のカラーを変えずに仕事ができる点にもメリットを感じたんです」。イオン各務原ショッピングセンターにあるというロケーションからか、20〜30代から時には50〜60代のお客さんも来店する。「接客業自体がとても楽しいなって思えました。ここで学べたことは、今後に生きてくると思えます」。

10代中盤で音楽とファッションの虜になり、大学では写真に触れてきた。いろんな表現手段がある中で、彼女はその時々に合わせた手段を選んでは自分のものとして消化してきた。気付けばアパレル企業に入りたいという夢があり、それは偶然にも自分の父親が手掛ける会社と同じ職種だったということかも知れない。

情熱で、自分のやりたい仕事と将来へ。表現すべきことと手段は身に付けている。ロックテイストな真っ黒のクルマとモノトーンのファッションに身を包み、情熱は内に秘めて彼女は進む。BGMはもちろんメタルに決まってる。

Photographs by Noriyuki Washizu Text by Eiji Kito Creative Direction & Art Direction by Akihiro Imao

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