災害に強い車の特徴や選び方は?車中避難時の注意点やおすすめ車種も紹介
近年、地震や豪雨などの自然災害が増え、車を「移動手段」だけでなく「避難場所」として活用するケースが注目されています。もしもの時に頼れる車を選んでおくことは、家族の安全や安心に直結します。
本記事では、災害に強い車の特徴や選び方、車中避難を行う際の注意点を分かりやすく解説します。さらに非常時に役立つおすすめ車種も紹介するので、いざという時に備え、日常でも快適に使える一台を見つけましょう。
※目次※
・災害に強い車は悪路走破性能や高いボディ剛性、適切な車高と安定性を備え、移動手段としてだけでなく避難場所や電源としても活用可能。
・燃料タンクの容量や荷物の積載能力、室内の快適性、V2H機能の有無などが選ぶ上でのポイント。
・車中避難時はエコノミークラス症候群に注意し、防災グッズを事前に備蓄しておくことが重要。
災害に強い車の特徴
災害はいつ起こるかわからず、普段使っている車が非常時に「命を守る備え」となることもあります。豪雨による冠水や地震での道路寸断など、災害時の環境は過酷で、通常の車では対応できない場面も少なくありません。そんな時に重要なのが「災害に強い車」を選ぶことです。
では、いざというときに命を守れる車とは、どのような特徴を持つのでしょうか。まずは、災害時に真価を発揮する車の3つの主な特徴について詳しく見ていきましょう。
災害時の移動手段としての利便性
地震や豪雨などの災害により公共交通機関が麻痺した場合、車は命をつなぐ上で重要な移動手段となります。特に、もともと公共交通網が十分に整備されていない地域では、車がない状態での避難は困難を極める可能性があるでしょう。
また自力での避難というシーンだけでなく、救援物資の運搬や救助活動という側面からも、災害時に真価を発揮する車の存在価値は大きいといえます。自然災害が発生した際には、信頼性が高く、被災現場を安全に走行できる車があると安心です。
避難場所としての利用可能性
災害時に自宅が被災したり避難所が満員になったりした場合には、車は重要な避難場所です。車中避難の最大のメリットは、プライバシーが確保できる点でしょう。
避難所では多くの人と共同生活を送るため精神的負担が大きくなりますが、車内であればプライベートな空間として利用できます。また、ペットと一緒に避難できることも大きな利点です。
電源としての活用
災害時に車を電源として活用できることは、停電の発生時には大きな強みです。特に、ハイブリッド車やEVなどの電動車は、搭載された大容量バッテリーを活用して、非常用電源として機能します。
近年の電動車の多くには、車内に12Vシガーソケットだけでなく100V ACコンセントが設置されており、スマートフォンやタブレットの充電だけでなく、LED照明、ラジオ、電気ポット、さらには冷蔵庫なども使用可能です。
車両の燃料タンクやバッテリーの容量によりますが、数日間にわたる電力供給も不可能ではありません。
災害に強い車を選ぶポイント
災害に強い車を選ぶ際には、幾つかの重要なポイントを押さえることが必要です。ここでは、災害時に真価を発揮する車の選び方について、7つの観点から詳しく解説します。
これらの要素を理解することで、命を守る頼もしい味方となる災害に強い車を見極めることが可能となるでしょう。
悪路走破性能
災害の発生時には、倒木や土砂崩れが起きたり、道路が冠水したり、がれきが道路上に落ちていたりと路面が荒れる可能性が高まります。こうした状況にあっても問題なく走行できる能力が、悪路走破性能です。
悪路走破性能に優れた車は、避難時に大きなメリットをもたらします。その性能を高める最も重要な要素は駆動方式です。四輪駆動(4WD/AWD)システムを搭載した車両は、タイヤが空転しやすい状況でもしっかりグリップ力を発揮し、安定した走行を可能にしてくれます。
ボディの剛性
ボディ剛性は、災害発生時の走行における安全性を左右する重要な要素です。四輪駆動の車だったとしても、ボディ剛性が不足していては、荒れた路面を安全に走破できません。
特に注目したいのは、本格的なオフロード車に多く採用されている「ラダーフレーム」構造です。はしご型の形状をしたフレームは、車体上部にボディを結合させる構造であり、悪路走行時の剛性と走破性を高めています。
地震や台風によって木が倒れたり、がれきが飛散したりするような状況では、頑丈なボディが乗員を守る盾となります。災害に強い車選びでは、剛性の高さも重要な判断基準と考えましょう。
車高と最低地上高
車高と最低地上高も、災害に強い車選びにおける重要な要素といえます。車高は車のルーフの最高点の高さ、最低地上高は地面から車の底面までの高さを示す数値です。
最低地上高が高ければ高いほど、冠水した道路やがれきが散乱する状況でも安全に走行できる可能性が高まります。
SUVやクロスカントリー車は最低地上高が高く設定されているケースが多く、それに伴って車高も高くなる傾向があるため、セダン車などと比べると車高と最低地上高が高いのが一般的です。
ただし、車高が高ければ良いというわけではありません。車高の高さは重心の上昇を意味するため、横転リスクを高めることにつながります。このため、災害に強い車を選ぶ際は、適切なトレッド幅と強力な足回り、スタビライザーの装備にも注目すべきです。
燃料タンクの容量と燃費性能
災害時には燃料の調達が困難になるケースが多いため、燃料タンクの容量と燃費性能は重要な選択基準といえます。特に避難所への長距離移動や車中避難の際、燃料がどれだけ持つかは生命線となるでしょう。
災害時はガソリンスタンドも営業できなくなるため、一度の給油で長距離を走行できる車が安心です。つまり燃料タンク容量が大きい車であれば、一度の給油で遠方に避難できます。
同様に燃費性能も重要です。ハイブリッド車は燃費性能に優れており、少ない燃料で長距離を走行できるため災害時に強みを発揮します。EVやPHEVは、災害時の電源として活用できるという利点もあります。
荷物の積載能力
災害に強い車を選ぶ上で、荷室の積載能力も見逃せないポイントです。非常時には、水や食料、毛布、防災グッズなど大量の物資を運ぶ必要があるため、十分な荷室容量が命を守る重要な要素になるでしょう。
SUVやミニバンは広い荷室を確保できるため、災害時に適しています。効率的な積載のコツは、防水バッグや収納ボックスを活用し、防災グッズをカテゴリ別に整理することです。
室内の快適性
長時間にわたり車中避難する場合には、室内の快適性が心身の健康維持に直結します。車中避難用の車は、シートが完全にフラットになるリクライニング機能を備えていることが理想的です。これにより体への負担を軽減し、良質な睡眠を確保できます。
車内温度調整のためのエアコン性能も重要な要素です。災害時に燃料が限られる状況でも効率的に車内環境を整えられる車種を選ぶことが、健康を守る鍵といえます。小さな子どもや高齢者がいる家庭においては特に、家族の健康を守る上で重要なポイントと考えましょう。
電源供給能力(V2H)
災害時には停電が発生する可能性が高まりますが、電気がないと避難生活に大きな支障をきたします。そこで注目したいのがV2H(Vehicle to Home)機能を搭載した車です。この機能があれば、車両のバッテリーから家電製品に電力を供給できます。
PHEVやEVは大容量バッテリーを搭載しているため、災害時の電源として貴重な存在です。V2H機能を活用することで、停電時でも家電製品に数日間にわたり電力を供給できる可能性があります。
V2H対応車を選ぶ際は、バッテリー容量だけでなく、出力の大きさや接続方法についても確認しておくことが大切です。
車中避難時の注意点
災害時に車中避難する場合には、重要な注意点を理解しておくことで、万が一の際に命を守ることにつながります。災害に強い車があっても、使い方を誤れば安全を確保できません。
実際に車中避難を行う際に直面する可能性のある健康リスクや準備すべきアイテム、避難行動の判断基準について解説します。
エコノミークラス症候群に注意
車中避難時に最も注意すべきなのが、エコノミークラス症候群です。長時間にわたって同じ姿勢でいることで血流が滞り、足の静脈に血栓(血の塊)が形成される可能性が高まります。この血栓が肺の血管に到達すると、命に関わる「肺塞栓症」を引き起こす危険があります。
災害時の車中泊時には特にリスクが高まります。狭い車内での窮屈な姿勢や膝を曲げた状態での長時間の就寝は、血流を妨げる要因です。
予防するために、数時間ごとに車外に出て足首の回転運動や足踏みなどの簡単な運動を行い、ふくらはぎの筋肉を動かしましょう。
また、水分を小まめに摂取することも重要です。適切な水分補給は血液の粘度を適正に保ち、血栓形成のリスクを低減します。締め付けの強い衣類は避け、ゆったりとした服装で過ごしましょう。
防災グッズを事前に備蓄
車中避難には、適切な防災グッズを事前に備蓄しておくことが不可欠です。最低限必要なものとして、飲料水(1人1日3Lが目安)、長期保存可能な非常食、携帯トイレ、ウェットティッシュなどの衛生用品を用意しましょう。
車内での生活に特化したアイテムとしては、寝袋や防寒着、頭を支えるための枕などの快適に過ごすための寝具類も重要です。LEDランタンや手回し充電式ラジオ、モバイルバッテリーなどの電源関連グッズも必須アイテムといえるでしょう。
状況に応じて車での移動を続けるべきか判断
災害発生時には、安全な避難先の選択が重要です。車中避難にはプライバシーの確保やペットの同伴が可能といった利点があるものの、状況に応じて公共の避難所に移動する必要も生じます。
大雨による冠水時は、水深15cm程度でも車が走行不能になるリスクがあります。浸水地域では、車を高台に移動させた後、徒歩で避難するのが安全です。
特に津波警報発令時は車での避難は危険なため、避難所までの距離が徒歩圏内であれば、車は安全な場所に置いて避難しましょう。
また、自治体が指定する避難所に十分な駐車スペースがない場合が多いため、車を置く際は他の避難者の妨げにならない場所を選ぶことが重要です。
緊急車両の通行を妨げないよう道路脇への駐車は避け、自治体の避難ルールに従った行動を心がけましょう。
災害に強い車おすすめ6選
災害に強い車の特徴を備えている6車種を厳選しました。災害に強い車は、単なる移動手段ではなく、いざというときに命を守る大切なパートナーです。それぞれの特徴を理解して、自分の防災対策に最適な1台を見つけましょう。
スズキ ジムニー
スズキ ジムニーは、軽自動車規格のコンパクトサイズながら、災害時にも頼りになる高い走破性を誇る車です。205mmという高い最低地上高と頑丈なラダーフレーム構造、パートタイム4WDシステムで、ぬかるみや土砂崩れの現場でも安定した走行を実現します。
特に注目したいのは、アプローチアングルやデパーチャーアングルが考慮された設計で、急な斜面や段差の多い悪路でも難なく走行できる能力です。東日本大震災や熊本地震の被災地では、ジムニーががれきの散乱する道路を走り抜け、救援活動に大きく貢献しました。
さらに、軽自動車ならではのボディサイズは、災害時には強みです。狭い道や住宅街の細い路地でも取り回しがよく、被災地の複雑な地形でも機動力を発揮します。
(参考:『ジムニー(スズキ)の中古車一覧|中古車の【ネクステージ】』)
スズキ ジムニーシエラ
ジムニーシエラは、人気のジムニーをひと回り大きくしたモデルで、災害発生時に高い実用性を発揮します。
ジムニーと同様の頑丈なラダーフレームとパートタイム4WDを継承しつつ、1.5L直列4気筒エンジンを搭載、最高出力102PS、最大トルク13.3kg・mと、軽自動車のジムニーよりもパワフルです。高速道路での長距離移動も余裕で行えるため、広域避難時に力を発揮します。
ボディサイズはコンパクトながらも、オーバーフェンダーにより存在感があり、リアシートを倒せば352Lの大容量荷室が確保できます。家族分の防災グッズや飲料水、食料などを十分に積載可能です。
また、悪路走破性を重視した3リンクリジッドアクスル式サスペンションにより、災害で道路状況が悪化した場合でも安定して走行できます。車高が高く視界も良好なため、浸水路や障害物の多い被災地でも安全に移動できるでしょう。
(参考:『ジムニーシエラ(スズキ)の中古車一覧|中古車の【ネクステージ】』)
トヨタ ランドクルーザー300
トヨタ ランドクルーザーは「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」というキャッチコピーが示す通り、災害時に最も信頼される車種のひとつです。
最新のランドクルーザー300は最低地上高が225mmあり、水深700mmまでの渡河性能を持っています。世界中の過酷な環境で高く評価されている、圧倒的な走破性と耐久性です。
3.3Lツインターボディーゼルエンジンは、ディーゼル車で最大トルク71.4kg・mというパワーを発揮しながらも、9.7km/Lという実用的な燃費も実現しました。大容量の燃料タンクと組み合わせることで、災害時の長距離移動も可能です。
マルチテレインセレクトという6つの走行モードを搭載し、ぬかるみや砂地、岩場など、あらゆる路面状況に対応します。さらに、後部座席を倒せば最大2,050Lの広大な荷室スペースが確保でき、避難時の荷物や救援物資の運搬にも最適です。
ジープ ラングラー
ジープ ラングラーは、1941年に誕生した軍用車両のDNAを受け継ぐ本格オフローダーで、世界中で高い評価を得ている災害時に頼りになる車です。最低地上高も十分に確保され、優れた渡河能力を持つため、豪雨による冠水路面でも走行できます。
ボディはラダーフレーム構造を採用し、悪路での捻じれに強く、頑丈さが特徴です。4WDシステムには、ロックディファレンシャルやトランスファーケースを装備し、17インチの大径タイヤと組み合わせることで、登坂角と降坂角も優れています。
また、電子制御式フロントスウェイバー切り離しシステムにより、オフロード性能がさらに向上しました。フロントホイールが上下に動くことで、悪路走行時の接地性を向上させます。
(参考:『ジープ・ラングラーアンリミテッド(クライスラー・ジープ)の中古車一覧|中古車の【ネクステージ】』)
三菱 アウトランダーPHEV
三菱アウトランダーPHEVは、災害時にも頼りになるプラグインハイブリッドSUVです。最大の特長は優れた外部給電機能(V2H)で、停電時には車から家電製品に電力を供給できます。
満タン状態でガソリン発電と組み合わせれば、最大約11日分もの電力供給が可能で、最大出力1,500Wのコンセントにより冷蔵庫やテレビなどの電化製品を稼働させられます。
また、三菱独自の四輪駆動システムにより高い走破性を備え、悪路や冠水した道路でも安定した走行が可能です。広い荷室スペースと快適な車内環境が整っているため、避難所が利用できない際の車中泊スペースとしても使えます。
(参考:『アウトランダーPHEV(三菱)の中古車一覧|中古車の【ネクステージ】』)
三菱 デリカD:5
三菱デリカD:5は、ミニバンの居住性とSUVの悪路走破性を兼ね備えた災害に強い車です。
高い最低地上高と四輪駆動システムにより、悪路や積雪地での走行性能に優れています。リンク式リジッドアクスルサスペンションとラダーフレーム構造により、災害時の不安定な路面でも安定した走行が可能です。
室内空間も魅力的で、3列目シートにはロングスライド機能が備わり、どの席でも快適に過ごせるよう設計されています。シート素材には撥水加工が施されており、荒天時や災害時の使用でも気になりません。
荷室は多彩なシートアレンジが可能で、3列目シートを跳ね上げれば広大なスペースが確保できます。2列目と3列目シートを倒せばフラットモードになり、車中泊にも最適です。豊富な収納スペースがあるため、防災グッズの常備にも便利でしょう。
(参考:『デリカD:5(三菱)の中古車一覧|中古車の【ネクステージ】』)
まとめ
災害に強い車は、悪路走破性能や高いボディ剛性、適切な車高と安定性を備え、移動手段としてだけでなく、避難場所や電源としても活用できます。選ぶ際は燃料タンクの容量や荷物の積載能力、室内の快適性、そしてV2H機能の有無などがポイントです。
車中避難時はエコノミークラス症候群に注意し、防災グッズを事前に備蓄しておくことを意識しましょう。状況に応じた判断と適切な車選びにより、災害時の安全確保を可能にします。
【この記事の執筆者】
五十嵐巧
大手出版社での書籍編集を皮切りに、25年以上にわたり書籍・雑誌・Webメディアの編集・ライティングに携わる。現在はフリーランス編集者・ライターとして活動し、複数の自動車メディアでもコンテンツの編集・執筆に取り組む。豊富な取材経験と専門知識を活かし、読者に信頼される情報を提供し続けている。
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