ブレーキパッドの残量確認方法は?交換時期の判断基準も紹介
車を安全に運転する上で重要となる機能のひとつが「ブレーキ」です。その心臓部ともいえるブレーキパッドは、日々の使用で少しずつ摩耗します。運転中にブレーキの利きが以前より悪くなったと感じることもあるでしょう。
ブレーキパッドは、適切なタイミングでの点検・交換を怠ると、重大な事故につながる可能性もある重要なパーツです。しかし、目に見えにくい場所にあるため、交換時期の判断に迷われる方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ブレーキパッドの残量チェックの方法についてご紹介します。運転上の注意についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
※目次※
・ブレーキパッドは残量5mm以下で消耗が加速する。3mm以下では早期交換が望ましい。
・異音や警告灯、ブレーキフルード量など、複数の方法でブレーキパッドの状態を確認できる。点検整備記録簿での確認も重要。
・車間距離を保ちエンジンブレーキを活用する穏やかな運転で、ブレーキパッドの寿命を延ばせる。
ブレーキパッドの役割
自動車の運転において、加速と同じくらい重要なのが減速や停止の機能です。この制動力を生み出すためにブレーキパッドが取り付けられています。
日常的に使用するブレーキシステムの中で、ブレーキパッドはどのような役割を果たしているのか、疑問に思う方もいるのではないでしょうか。ここでは、安全運転に欠かせないブレーキパッドについて、詳しく見ていきましょう。
ブレーキパッドとは?
ブレーキパッドは、車の速度を制御するディスクブレーキシステムの中核を担う部品です。車輪と一緒に回転しているディスクローターと呼ばれる金属製の円盤を両側から挟み込み、摩擦力を生み出すことで車の速度を落としたり停止させたりします。
常に摩擦を伴う過酷な使用環境にあるため、使用するにつれて徐々に摩耗するパーツです。交換時期を逃すと、ブレーキの効きが悪くなるだけでなく、ディスクローターまで傷を付けてしまう可能性もあるため、定期的な点検と適切なタイミングでの交換を心がけましょう。
ブレーキパッドのタイプは2種類
ブレーキパッドのタイプは、大きく分けると「レジン系」と「メタル系」の2種類です。レジン系は、金属と樹脂を混ぜ合わせて作られており、一般的な街乗りに適しています。初期制動の効きが良く、価格も手頃なのが特徴です。
メタル系は、金属を高温で焼き固めて製造されたブレーキパッドで、強いブレーキング時でも安定した制動力を発揮し、耐久性も優れています。
ブレーキパッドを使用するのはディスクブレーキ
自動車のブレーキシステムは、ディスクブレーキとドラムブレーキの2種類です。ディスクブレーキは、回転するディスクローターをブレーキパッドで挟み込んで制動力を生み出すタイプで、主に前輪に搭載されています。放熱性に優れ、連続的なブレーキ操作でも安定した制動力を発揮できるのが特徴です。
一方、ドラムブレーキは円筒形のドラム内側からブレーキシューを押し付けて制動する仕組みで、主に後輪で使用されます。構造がシンプルで軽量なのが特徴です。一方で、放熱性についてはディスクブレーキよりも劣ります。
車検項目でのブレーキパッド測定方法と規定
車検の検査項目で「ブレーキパッドの残量測定」という項目は存在しません。残りが1mmでも車検に合格することがあります。ブレーキの検査でチェックされるのは「ブレーキがしっかりと利くか」ということです。
機械によって回っているタイヤに対してブレーキを踏み、しっかりと正常に利いているかを検査します。パッド残量の規定もありませんし、検査官によって残量を検査されるということもありません。
そのため、ブレーキパッドの交換をすすめられたとしても、車検に合格することだけに焦点を当てるのであれば、交換をする必要はないのです。ただし、安全で快適なドライブを楽しむためにも、ブレーキパッドの状態を確かめておく必要があるでしょう。
ブレーキパッドの残量の確認方法
ブレーキパッドの残量チェックは、安全運転を維持するために欠かせない点検項目のひとつです。専門的な工具がない場合でも、いくつかの方法で状態を確認できます。
主な確認方法は整備記録簿です。また、音や警告灯などでも確認が可能です。ここでは、ブレーキパッドの残量を知るためのポイントについて詳しく見ていきましょう。
点検整備記録簿で確かめる
車の管理状態を記録した点検整備記録簿には、ブレーキパッドの残量も記載されています。前回の点検時から現在までの走行距離と記録された残量を確かめておくと、ブレーキパッドの状態を把握できるでしょう。
1万kmの走行でブレーキパッドは約1mm減少するといわれていますが、走行環境や運転スタイルによって大きく変動します。点検整備記録簿は、交換時期を予測する上で重要な参考資料となるため、定期点検ごとに確かめておくとよいでしょう。
音でチェックする
ブレーキパッドの状態は、音の変化からでも判断が可能です。多くの車両には「パッドウェアインジケーター」と呼ばれる警告装置が搭載されています。
ブレーキパッドの残量が規定値を下回ると、ブレーキ操作時に「キー」や「シャー」という金属的な音を発生させます。これは交換時期が近づいていることを知らせるサインです。
また、ブレーキ操作時に「カラカラ」という音が聞こえる場合は、ブレーキパッドにひび割れが生じている可能性が高いでしょう。「ゴー」という異音は、パッドが完全に摩耗してブレーキローターに金属部が接触している、あるいは異物が挟まっている状態です。
これらの異音が発生した場合は、早めに点検を受ける必要があります。なお、ブレーキパッド交換直後に異音が発生する場合は、取り付け不良やブレーキローターの状態に問題が起きている可能性があるため、施工した整備工場に再確認してもらいましょう。
ブレーキ警告灯を確認する
ブレーキ警告灯は、ブレーキパッドの残量を知らせる重要なインジケーターのひとつです。通常は、サイドブレーキを引いた状態でのみ点灯しますが、サイドブレーキを解除しているにもかかわらず点灯する場合、ブレーキパッドの残量が著しく減少している可能性があります。
これは、ブレーキパッドが摩耗すると、その分のスペースを補うためにブレーキフルードがブレーキキャリパーへより多く流れ込み、タンク内の残量が減少するためです。ブレーキフルードが一定量を下回ると、警告灯が点灯する仕組みになっています。
ただし、警告灯の点灯はブレーキフルードの漏れを示している可能性もあるため、早めに整備士に相談するとよいでしょう。
ブレーキフルードの残量を調べる
ブレーキパッドの状態は、ブレーキフルードの量でも判断できます。ブレーキフルードは制動力を生み出すために不可欠な液体で、適切な量を保つことが安全運転につながります。
フルードタンクには上限と下限を示す目盛りが付いており、液面が下限ラインより上にあれば問題ありません。一方で、ラインを割り込んでいる場合は要注意です。フルードの減少は、多くの場合ブレーキパッドの摩耗が進行している恐れがあります。
ブレーキパッドの残量で状態が異なる
ブレーキパッドは、新品時には約10mmの厚みがありますが、使用すると徐々に摩耗します。残量によって、ブレーキの効き具合や安全性は大きく変わるでしょう。
ホイールの隙間から目視で確認できますが、正確な測定には定規などの器具が必要です。自己点検時にチェックする場合には、安全に十分注意を払いましょう。ここでは、ブレーキパッドの残量ごとの状態についてまとめました。
残量が5mm
ブレーキパッドが5mmまで減少した状態は、新品時の約半分が摩耗したことを意味します。ブレーキの制動力も十分に保たれている可能性が高く、交換の必要性は低いでしょう。
ただし、この時期を境に摩耗のペースが加速する傾向があるため、頻繁な点検が求められます。特に、市街地走行が多く頻繁なブレーキ操作を行う場合は、消耗が早まりやすいでしょう。
残量が4mm
残量が4mmになると、ブレーキの効きにくさを実感し始める可能性があります。この段階は、交換を検討し始めるタイミングです。運転状況によっては、早めの交換を心がけましょう。
急ブレーキの使用頻度が高い場合や山道・坂道の走行が多い場合、4mmの時点で交換しておくと安心です。予防的な交換により、より安全な走行を確保できます。
残量が3mm
ブレーキパッドが3mmまで減少した場合、早めの交換が必要です。この時期になると、多くの車両で警告灯が点灯し始め、交換時期を知らせます。
警告灯の点灯を無視して走行を続けると、金属音が発生したりブレーキの制動力が著しく低下したりする恐れもあるでしょう。
残量が1mm~2mm
残量が2mm以下になると、重大なトラブルのリスクが急激に高まります。ブレーキパッドの破損やディスクローターの損傷が起こりやすく、制動力の著しい低下を招く恐れもあるでしょう。
この状態での継続使用は非常に危険なため、早急に整備工場での点検や交換をおすすめします。
残量が0mm
ブレーキパッドが完全に摩耗した状態での走行は、極めて危険です。パッドの摩擦材が消失することで、金属部分が直接ディスクローターと接触し、制動力が著しく低下します。
ディスクローターにも深刻なダメージを与え、高額な修理費用が発生する可能性もあるでしょう。
ブレーキパッドの交換費用の目安
ブレーキパッドの交換費用は車種によって異なります。部品代の場合、軽自動車ではフロントとリアそれぞれ7,000円程度、普通自動車では各8,000円程度が目安です。
これに工賃を加えると、前輪または後輪のみの交換でも、軽自動車で1万2,000円~1万4,000円、普通自動車で1万3,000円~1万5,000円ほどの費用がかかります。なお、スポーツ仕様車やや高級車の場合、ブレーキパッドや工賃の費用が高額になる可能性が高いでしょう。
ブレーキパッドが消耗しやすい環境と運転上の注意点
走行距離によっておおよその交換時期の目安はありますが、運転の仕方によって交換時期は変わると認識しておきましょう。ここからは、ブレーキパッドが消耗しやすい運転を解説します。
車間距離をあけて無駄にブレーキを踏まない、エンジンブレーキを上手に利用するなど、優しい運転を心がければパッドの消耗は抑えることが可能です。ブレーキパッドに負担がかかる運転は避けるようにしましょう。
乱暴な運転や急ブレーキが多い運転
車間距離を詰めた運転や必要以上の加速など、乱暴な運転や急ブレーキは好ましくありません。車間距離を詰めると前を走る車が減速するたびにブレーキを頻繁に踏むことになり、ときには急ブレーキをかけることもあるでしょう。
そのような運転の仕方では、パッドの減りは早くなります。また、必要以上の加速も同じです。スピードが出ているため、頻繁なブレーキや急ブレーキをかける確率も高まります。
車間距離をあけて適度なスピードで走行すれば、前を走る車が減速したとしてもエンジンブレーキで事足りることが多くなるでしょう。不要なブレーキングが減りパッドへの負担がかかりません。
山道・下り坂運転が多い車
山道や下り坂の運転が多いと、平坦な道よりも加速してしまうため、必然的にブレーキングの回数が増えます。その結果、パッドの消耗も早くなるでしょう。
こういった場合には、エンジンブレーキを上手に利用することが重要です。下り坂になる前にあらかじめ低いギアに落としておけば、下り坂の勾配による加速も制御され、ブレーキングを減らせます。
まとめ
ブレーキパッドは、車両の安全性を左右する重要な消耗品です。新品時の厚みは約10mmですが、使用とともに徐々に摩耗し、5mm以下になると消耗のペースが加速します。点検整備記録簿、警告音、警告灯、フルード残量など、複数の方法で状態を確かめておくとよいでしょう。
3mm以下での走行は危険性が高まるため、早めの交換をおすすめします。また、急ブレーキや下り坂での頻繁なブレーキ操作は消耗を早めるため、適切な車間距離を保ち、エンジンブレーキを活用するなど、優しい運転を心がけましょう。適切な運転の仕方で、ブレーキパッドの寿命を延ばせます。
▼ライタープロフィール
兒島裕和
2018年よりフリーランスのWebライターとして活動。車関係の記事を中心に、これまでに2,000本以上の記事を執筆。日本の普通自動車免許に加えて、EU圏内の自動車免許を2020年に取得。国内に加えて海外の自動車事情にも精通。
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