車のブレーキの効きが悪い場合の原因と対処法は?修理費用の目安も解説

「ブレーキが踏み込んでも車が止まりにくい」「いつもより強く踏まないとスピードが落ちない」といった経験はないでしょうか。ブレーキの効きが悪くなると、通常の運転はもちろん、緊急時の対応にも支障をきたし、最悪の場合は重大事故につながる危険があります。
ブレーキの効きが悪くなるさまざまな原因と適切な対処法、そして気になる修理費用の目安まで、命を守るための知識を把握しておきましょう。
※目次※
・ブレーキの効きが悪くなる主な原因として、パッドの摩耗やフルードの劣化、ローターの不具合、キャリパーの固着などが挙げられる。
・フェード現象や雨天時のハイドロプレーニング現象など、特殊な状況でも性能が低下する可能性がある。
・ブレーキのトラブルは重大事故につながる危険性があるため、定期的な点検と早期の修理が重要。
車のブレーキの効きが悪い原因と修理費用

制動距離が長くなったりペダルの感触が変わったりと、車のブレーキに違和感を覚える症状は、さまざまな部品の劣化や不具合が原因と考えられます。
ブレーキパッドやフルードといった消耗品から電子制御システムまで、ブレーキの効きが悪い状態を引き起こす要因について確認しましょう。
ブレーキパッドの摩耗
ブレーキパッドは、ブレーキローターを挟み込んで摩擦力を発生させる部品です。新品時の厚さは約10mmですが、走行とともに徐々に摩耗していきます。
車種や運転状況によっても異なりますが、一般的に1万km走行ごとに約1mmずつ減っていくため、パッドの残量が2mm~3mmになったら交換が必要です。摩耗が進むと「キーキー」という金属音が発生し、制動距離が長くなってしまいます。
交換費用は、軽自動車で約1万4,000円~、普通車で約1万6,000円~、輸入車では1カ所につき1万5,000円~2万円程度が相場です。さらに工賃3,000円~1万円程度が加わります。
ブレーキオイル(ブレーキフルード)の劣化・漏れ
ブレーキの効きが悪い原因として、ブレーキオイル(ブレーキフルード)の劣化や漏れが挙げられます。ブレーキフルードは油圧を伝達する役割を担っており、劣化すると空気中の水分を吸収し、沸点が下がるのが特徴です。
ブレーキを多用すると熱が発生し、劣化したフルードが沸騰して気泡が発生します。その結果生じるのが、ブレーキペダルがスポンジのように柔らかくなり、制動力が大幅に低下する危険な状態です。
定期点検では、エンジンルーム内のリザーバータンクで液量と色をチェックしましょう。正常なフルードは透明から薄黄色ですが、茶色や黒色に変色したら交換時期です。
ブレーキフルードの交換費用は3,000円~8,000円程度、漏れが生じている部分の修理は部位により5,000円~3万円程度が目安といえます。
ブレーキローター(ブレーキディスク)の不具合
ブレーキローター(ブレーキディスク)は、ブレーキパッドが挟み込む円盤状の金属製部品です。長期にわたる使用により表面が摩耗したり、過度な熱によりゆがみが発生したりすると、ブレーキの効きが悪い状態を引き起こします。
ローターの摩耗が進むと、パッドとの接触面積が減少し制動力が低下します。また、ゆがみがあるとペダルを踏んだ際に振動が発生し、均一な制動力が得られません。
ローターの交換目安は走行距離10万km程度、または新品時より1.5mm~2mm減った場合です。交換費用は1カ所につき約4,000円で、4カ所全てを交換する場合は1万円以上かかります。
ブレーキキャリパーの汚れや不具合
ブレーキキャリパーは、油圧ピストンの力でブレーキパッドをディスクローターに押し付ける部品です。長期間の使用により、内部のピストンにさびや汚れが蓄積すると固着が発生し、ブレーキの効きが悪い状態を引き起こします。
ピストンが正常に動作しないと、ブレーキパッドがローターに均等に押し付けられず、片減りや制動力の低下が起こります。さらに、固着したピストンはブレーキを解除してもパッドを押し付け続けるため、常にブレーキがかかった状態となり「引きずり現象」が発生する可能性があるでしょう。
このような症状を放置すると、最悪の場合ブレーキがまったく効かなくなる危険性があるため、早期の対処が必要です。
修理方法としては、軽度な場合はキャリパーの分解清掃で対応できますが、重度の固着はオーバーホール費用が1カ所につき約1万5,000円、交換が必要な場合は1カ所につき4万円前後の費用がかかります。
ブレーキブースターやマスターシリンダーの不具合
ブレーキブースターは、エンジンの負圧を利用してペダルの踏み込み力を軽減し、軽い力でもブレーキ効果を得られるようにする装置です。不具合が生じるとペダルが異常に重くなり、必要な制動力を得るために非常に強い力が必要になります。
一方マスターシリンダーは、ブレーキペダルから伝わった力を油圧に変換する役割を担う存在です。内部のゴムパッキンが劣化したり、シリンダー内部に傷が発生したりすると、油圧が正常に伝達されず、ペダルが奥まで入り込んでしまう現象が起こります。
これらの不具合は、ブレーキの効きが悪い状態を引き起こす深刻な原因であるため、症状を感じたら速やかな点検が必要です。修理費用は、ブレーキブースターの交換は5万円~10万円程度、マスターシリンダーの修理・交換は3万円~7万円程度が目安と考えましょう。
ブレーキホースの劣化・破損
ブレーキホースは、ブレーキフルードを各車輪のブレーキキャリパーへ送る配管部品です。通常、ゴムや金属メッシュで作られていますが、長年の使用により劣化や破損が生じることがあります。
ホースが劣化するとひび割れや膨張が発生し、フルード漏れによる油圧不足でブレーキの効きが悪い状態が生じます。特に危険なのは、縁石への接触や路上の障害物による突然の破損で、急激な制動力低下を引き起こす可能性があるでしょう。
点検時は、ホース表面のひび割れやふくらみ、周囲のフルードの漏れ跡を確認します。交換費用は1本につき5,000円~15,000円程度で、車種や使用部品により変動するでしょう。
空気混入(エア噛み)による油圧不足
ブレーキ系統に空気が混入すると、油圧が正常に伝わらず「エア噛み」という状態になり、ブレーキの効きが悪い状況を引き起こします。空気は液体と違い圧縮されるため、ペダルを踏んでも力がブレーキパッドまで届かず、フワフワした感触になるでしょう。
この現象は、ブレーキフルード交換時のエア抜き作業が不十分だった場合や、ブレーキホースの接続部が緩んだ際に発生しがちです。また、ブレーキオイルの劣化により沸騰が起こり、発生した気泡がエア噛みの原因となるケースもあります。
対処方法は専門工場でのエア抜き作業で、費用は3,000円~8,000円程度が目安です。4輪全てのブレーキラインから、確実に空気を除去する作業が求められます。
電子制御系の故障
現代の車にはABS(アンチロック・ブレーキ・システム)やEBD(電子制動力配分)、電動パーキングブレーキなど、多くの電子制御システムが組み込まれています。
これらのシステムに不具合があると、制動力が片側だけに偏ったり、ABSが不要な場面で作動したりして、ブレーキの効きが悪い状態を引き起こす可能性があるでしょう。
特にABSセンサーの故障では、警告灯の点灯だけでなく、急ブレーキ時にタイヤがロックしやすくなったり、スピードメーターが正常に動作しなくなったりする症状が現れます。
電子制御系のトラブルは、見た目や動作だけでは原因特定が困難なため、OBD2スキャナーなどの故障診断機によるスキャン診断が必要です。修理費用は、ABSセンサーの交換で約1万5,000円~3万円、電動パーキングブレーキの修理で約3万円~10万円程度が目安です。
タイヤ周辺の不具合
タイヤの状態は、ブレーキの効きが悪い原因として見落とされがちな要素です。タイヤの残り溝が4mmを切ると制動距離が延び始め、1.6mmを切ると使用限度に達するため、制動性能に大きな影響を与えます。
また、ABSの不具合も重要な原因のひとつです。ABSセンサーの故障によりタイヤの回転情報が正確に伝達されないと、制動力の配分が適切に行われなくなります。
タイヤの交換費用は1本につき5,000円~2万円程度、ABSセンサーの交換は約1万5,000円~3万円が目安です。
ブレーキの不調は重大事故につながる危険な状況
ブレーキの効きが悪い状態は、重大な交通事故につながりかねない危険な状況です。制動距離が延びることで、前方車両への追突リスクが大幅に高まります。ブレーキ系統の不備による事故は、死傷者を伴う重篤なケースも少なくありません。
特に高速道路や下り坂の走行中にブレーキが効かなくなると、車両をコントロールできなくなり、ガードレールへの衝突や対向車線への飛び出しなど、自分だけでなく他の車両や歩行者を巻き込む大惨事につながる可能性があります。
ブレーキに少しでも違和感を覚えたら、「まだ大丈夫だろう」と軽視せず、即座に専門工場での点検を受けることが重要です。
車のブレーキの効きが悪い場合の代表的な現象

ブレーキの効きが悪い状況には、特定の条件下で発生する危険な現象がいくつか存在します。これらの現象は運転中に突然発生する可能性があり、適切な知識と対処法を把握しておくことが重要です。
長距離運転や悪天候時に特に注意が必要な代表的な現象について、その仕組みと対策を詳しく解説します。
フェード現象
フェード現象は、長い下り坂でブレーキを連続使用した際に発生する危険な現象です。ブレーキパッドとブレーキローター間の摩擦により発生した熱が、摩擦材の耐熱温度を超えることで起こります。
過熱した摩擦材からガスが発生し、このガスの塊がブレーキパッドとローターの間に侵入すると、潤滑剤として作用してしまいます。その結果、摩擦係数が大幅に低下し、ブレーキの効きが悪い状態になるという経緯です。
予防策として最も重要なのは運転方法で、フットブレーキの連続使用を避け、積極的にエンジンブレーキを活用しましょう。シフトを低速ギアに入れることで、エンジンの抵抗力を利用した減速が可能になります。
ベーパーロック現象
ベーパーロック現象は、ブレーキフルードの過熱により発生する重大なトラブルです。油圧ブレーキはペダルを踏む力をフルードの圧力として各車輪に伝達しますが、フルードが沸騰すると気泡が発生し、この気泡が力を吸収してしまいます。
ブレーキペダルがスポンジのように柔らかくなり、通常と同じ力で踏んでもブレーキの効きが悪い状態です。特に下り坂での連続ブレーキ使用時や、劣化したフルードを使用している場合に起こりやすくなります。
長い下り坂ではエンジンブレーキを積極的に活用し、フットブレーキへの負担を軽減することで、ベーパーロック現象も防げるでしょう。
ハイドロプレーニング現象
ハイドロプレーニング現象は、雨天時にタイヤと路面の間に水膜が形成され、車両のコントロールを失う危険な状況です。時速80km以上で発生しやすいとされますが、タイヤの摩耗状況や路面の水量によっては、より低い速度でも起こり得ます。
この現象が発生すると、ブレーキの効きが悪い状態になり、ハンドル操作もまったく効かなくなるでしょう。タイヤの溝が浅くなったり、空気圧が不足したりしていると、排水能力が低下してより起こりやすくなるのが特徴です。
発生時に慌てて急ブレーキを踏まないことが、重要な対処法といえます。アクセルペダルから足を離し、ハンドルを真っすぐに保ちながら、エンジンブレーキで徐々に減速させましょう。
車のブレーキの効きが悪くて止まらない場合の緊急対処法

運転中にブレーキの効きが悪い状態に陥った場合には、冷静な判断と適切な対処法が命を守る上で重要です。パニックに陥らず段階的に対処することで、最悪の事態を回避できる可能性が高まります。
実際にブレーキが効かなくなった緊急時に実践したい具体的な対処手順について、確認しましょう。
エンジンブレーキで減速する
ブレーキが効かない緊急時には、まずはエンジンブレーキを活用して減速を試みましょう。アクセルペダルから足を離すだけでもエンジンの抵抗により車両は減速しますが、より強力な効果を得るにはシフトダウンが有効です。
AT車の場合、アクセルペダルから足を離して車速が落ちてきたら、シフトレバーを「2」や「L(ローギア)」の位置に入れます。マニュアル車では、3速ギア、2速ギアへと段階的にシフトダウンしましょう。
ただし、エンジンブレーキはブレーキランプが点灯しないため、後続車への注意が必要です。ハザードランプを点滅させて周囲に異常を知らせましょう。
パーキングブレーキ(サイドブレーキ)を使う
エンジンブレーキで十分に減速したら、パーキングブレーキ(サイドブレーキ)を使用して車両を停止させます。
手動式のサイドブレーキの場合、何回かに分けて徐々にレバーを引き上げていきます。足踏み式の場合も同様に、少しずつ踏み込んでいくことが重要です。ただし、急激な操作は、後輪がロックして車両がスピンする危険性があるため避けましょう。
電動パーキングブレーキが装備された車両では、走行中にスイッチを引き上げ続けることで緊急停止機能が作動します。車種によって動作が異なるため、事前に取扱説明書で確認しておきましょう。
ガードレールや壁に車体を当てて停車する
エンジンブレーキやパーキングブレーキでも減速できず、前方に車両や歩行者がいるような危険な状況では、最終手段としてガードレールや壁などに車体を当てて停車する方法があります。これは、人身事故を回避するための苦渋の選択です。
実行する際は、車体側面をガードレールにこすり付けるように接触させ、摩擦抵抗を利用して徐々に減速させます。ハンドルを急激に切ると車両がコントロールを失う危険があるため、穏やかに操作することが重要です。
同乗者がいる場合は「つかまって」と声をかけ、シートに身を預けて頭部を守る姿勢を取らせましょう。車両の損傷は避けられませんが、人命を守ることが最優先です。停車後は速やかに安全な場所に避難し、警察などに連絡しましょう。
ロードサービスに連絡する
車を安全な場所に停車させた後は、運転を再開してはいけません。ブレーキの効きが悪い状態では、わずかな距離でも重大事故につながる危険があります。
まずはJAFや加入している自動車保険のロードサービスに、速やかに連絡しましょう。連絡時は現在地の詳細、車両の状況、異音や異臭の有無を正確に伝えることで、迅速な対応が期待できます。
ロードサービス業者は専門知識を持つスタッフが対応するため、ブレーキトラブルの原因を適切に判断し、安全な修理工場まで車両を搬送してくれます。作業中は指示に従い、車から離れた安全な場所で待機することが重要です。
まとめ

ブレーキの効きが悪くなる主な原因として、パッドの摩耗やフルードの劣化、ローターの不具合、キャリパーの固着などが挙げられます。また、フェード現象や雨天時のハイドロプレーニング現象など、特殊な状況でも性能が低下する可能性があるでしょう。
緊急時にはエンジンブレーキやパーキングブレーキを活用し、必要に応じてロードサービスを利用することで安全に対処できます。ブレーキのトラブルは重大事故につながる危険性があるため、定期的な点検と早期の修理が重要です。
【この記事の執筆者】

五十嵐巧
大手出版社での書籍編集を皮切りに、25年以上にわたり書籍・雑誌・Webメディアの編集・ライティングに携わる。現在はフリーランス編集者・ライターとして活動し、複数の自動車メディアでもコンテンツの編集・執筆に取り組む。豊富な取材経験と専門知識を活かし、読者に信頼される情報を提供し続けている。
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