トルクとは?車の走行性能に直結する必須知識を解説
自動車のカタログやレビューを見ていると、「トルク」というワードをよく目にします。馬力と並んで重要な性能指標とされていますが、具体的にどのような意味を持ち、走行にどのように影響するのでしょうか。
そこでこの記事では、トルクの基礎知識から、エンジンやモーターにおけるトルクの役割、そして実際の走行性能への影響まで、丸ごと解説します。トルクについて理解することで、自動車の性能をより深く理解できるでしょう。
※目次※
・トルクとは回転力のことで、日常生活から車のエンジンなどさまざまなシーンで体験できる。
・より低回転域で高いトルクを発生するエンジンは、瞬発力があり市街地走行に向いている。
・ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、電気モーターなど、動力源によってトルク特性は異なる。
トルクとは
「トルク」とは、車の走行性能を左右する重要な要素です。物理学的な定義から日常生活での活用例まで、トルクの基本的な概念は私たちの生活に密接に関わっています。まずは、トルクの基本的な意味と、私たちの身近な場面での活用例について見ていきましょう。
力学におけるトルクの定義と計算方法
トルクとは、物体に回転運動を引き起こす力の大きさを表す物理量です。具体的には、力をかける距離(レバーの長さ)と力の大きさの積で求められます。
トルクの単位は、一般的にN・m(ニュートンメートル)で表されます。例えば、1mのレンチで100ニュートンの力をかけた場合、発生するトルクは100N・mです。この原理は、より長いレバーを使用することで、少ない力で大きなトルクを生み出せることを示しています。
ボルトやナットを締める際にも、トルクで管理されています。自動車のエンジンでも、このトルクの原理が走行性能を左右する重要な要素です。
トルクの単位と換算方法
トルクの単位は、1992年の新計量法公示以降、「kgf・m」から国際単位系(SI単位)の「N・m(ニュートン・メートル)」に変更されました。
1N・mは、回転軸から1m離れた位置に1ニュートンの力を加えたときの回転力を表します。現在でも、法定計量単位とともに括弧書きで従来の単位を併記することは認められています。
kgf・mからN・mへの換算は、1kgf・mを9.80665N・mに乗じることで計算できます。実用的な計算では、おおよそ1kgf・m=10N・mとして換算することも可能です。
日常生活で体験するトルクの例
私たちの日常生活には、身近なところにトルクが存在しています。例えば、ドアノブを回す動作では、ノブの中心から手を離すほど、少ない力で回転させられます。これは、ドアノブの中心からの距離が長くなるほど、トルクが大きくなるためです。
ペットボトルのキャップを開ける際も同様です。固く締まったキャップを開けるときは、キャップの直径よりも大きな開栓補助具を使うことで、より少ない力で開けられます。
工具を使う場面でも、レンチやドライバーの柄が長いほど、少ない力でボルトやネジを回せます。このように、トルクの原理は私たちの生活のさまざまな場面で活用されているのです。
トルクとは?車のエンジンにおける重要性
車の走行性能を左右する最も重要な要素のひとつが「トルク」と「出力」の関係です。エンジンの種類によって、そのトルク特性は大きく異なり、それぞれに特徴的な走りを生み出します。ここでは、トルクの生み出し方と、それが走行性能にどのような影響を与えるのか見ていきましょう。
エンジンの出力特性とトルクの関係
エンジンの性能を示す上で、最高出力と最大トルクは重要な指標です。この2つの関係は「出力=トルク×回転数」という公式で表され、車の走行性能に大きく影響します。
トルクは自転車のペダルを踏む力に例えられ、加速性能を左右する重要な要素です。大きなトルクは素早い加速を可能にします。一方、出力は速度と深い関係があり、高速走行時の性能を決定づけます。
トルクカーブが示す走行性能への影響
トルクカーブを見ることで、その車の走行性能の特徴がよく分かります。トルクカーブがなだらかで、低回転数で最大トルクが発生するエンジンは、市街地走行に向いているといえるでしょう。発進時の出足が良く、ゆとりのある走りを実現できるためです。
一方、高回転域でトルクのピークを迎えるエンジンは、スポーティーな走りが楽しめます。ホンダのVTECに代表される可変バルブ機構は、低速と高速で異なるカムを使用することで、実用性と高回転域でのパワフルな走りを両立させています。
トルクカーブは、エンジンの性格を決定づける重要な要素です。車を購入する際は、トルクカーブもチェックし、自分の運転スタイルに合った特性を選びましょう。
トルクとは?パワーユニットによる特性の違い
車のパワーユニットによって、トルクの特性は大きく異なります。例えば、ガソリンエンジンとディーゼルエンジン、そして電気モーターでは、トルクの発生タイミングや特性が全く異なるのです。
ここでは、各パワーユニットにおけるトルクの特性と、その違いがもたらす走行性能への影響について解説します。
ガソリンエンジンとディーゼルエンジン
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンは、トルクの特性が異なります。ガソリンエンジンは、アクセルを踏み込むと素直にエンジン回転数が上昇し、中回転域で最大トルクを発生させるのが特徴です。高回転まで力強く回るため、スポーティーな走りが楽しめます。
一方でディーゼルエンジンは、高い圧縮比と頑丈な構造により、低回転から大きなトルクを発生させます。そのため、アクセルを踏んだ瞬間から力強い加速感を得られます。ただし、高回転までは回りにくく、最高出力は控えめになります。
内燃機関とモーターの発生トルクの違い
エンジンとモーターでは、トルクの発生特性が大きく異なります。エンジンは低回転域ではトルクが小さく、特定の回転数まで上げることで最大トルクを発揮します。
一方、電気モーターは、回転開始時に最大トルクを発生させ、回転数が上がるにつれてトルクは徐々に低下します。この特性により、EVは発進時の加速に優れ、変速機を必要としない構造が可能です。
ただし、EVは安全性を考慮し、発進時のトルクを精密に制御しています。これにより、過度なホイールスピンを防ぎ、スムーズな加速を実現しています。
トルクとは?トルク増大の仕組み
高いトルクを生み出すためには、エンジンの排気量を大きくすることや、ターボチャージャーを搭載することが有効な手段となります。ここでは、エンジン排気量とトルクの関係性について解説し、さらに過給器によるトルク向上のメカニズムについて見ていきましょう。
排気量とトルクの関係性
トルクはエンジンの排気量と密接な関係があります。一般的に1.0Lのエンジンで約10kg・m、2.0Lで約20kg・m、3.0Lで約30kg・mのトルクが発生します。これは、燃焼室の大きさが直接的にクランクシャフトを回転させる力に影響するためです。このように、エンジンの排気量は車両の力強さを決定する重要な要素となっています。
過給器によるトルク向上
過給器、特にターボチャージャーは、エンジンのトルクを大幅に向上させる革新的な技術です。排気ガスでタービンを回転させ、そのエネルギーでエンジンに送り込む空気量を増加させます。
エンジンの排気量を大きくすることなく、低回転域から高回転域まで幅広い範囲でトルクを向上させられます。これにより、発進加速や追い越し加速など、日常的な運転での扱いやすさが格段に向上します。
太いトルクが味わえる国産車3選
ここからは、国内自動車メーカーが誇る技術の結晶、日本車の中でも特に優れたトルクを発揮するモデルを紹介します。スポーツカーからSUVまで、ドライバーの意のままに操れる走りと、日常での扱いやすさを高次元で両立させた、注目の3台について見ていきましょう。
トヨタ GRヤリス
トヨタGRヤリスは、WRC(世界ラリー選手権)を意識して開発された高性能スポーツモデルです。1.6Lターボエンジンと四輪駆動システムを組み合わせ、卓越した走行性能を実現しています。
特筆すべきは、トヨタ初となる新型8速AT「GR-DAT」の搭載です。世界トップレベルの変速スピードを誇り、マニュアル感覚でスポーティーな走りを楽しめます。
GR-FOURと呼ばれる4WDシステムは、路面状況に応じて4輪へのトルク配分を瞬時に制御します。「NORMAL」「GRAVEL」「TRACK」の3つの走行モードを備え、路面状況に合わせて思い通りの走行を楽しめるでしょう。
(参考:『GRヤリス(トヨタ)の中古車一覧|新車・中古車の【ネクステージ】』)
ホンダ シビック TYPE R
新型シビック TYPE Rは、サーキット走行を見据えた究極のスポーツカーとして設計されています。2.0L VTEC TURBOエンジンは、最高出力330PS、最大トルク420N・mという圧倒的なパワーを誇り、初代NSXタイプRを超えるパワーウエイトレシオ4.33を実現しました。
走行性能を支えるシャシーに採用されたのは、軽量化された新世代プラットフォームです。デュアルアクシス・ストラットサスペンション(フロント)とマルチリンク式サスペンション(リア)の組み合わせにより、優れたハンドリング性能を発揮します。
+R、SPORT、COMFORTの3つのドライブモードに加え、カスタマイズ可能なINDIVIDUALモードを搭載し、あらゆる走行シーンに対応します。
(参考:『シビック TYPE R(ホンダ)の中古車一覧|新車・中古車の【ネクステージ】』)
マツダ CX-5
CX-5は、クラストップレベルの走行性能を誇るSUVです。特にディーゼルエンジンモデルは、低回転域から力強いトルクを発生させ、加速性能と燃費性能を高次元で両立しています。また、高いレスポンスと静粛性を両立させており、気持ちいい加速が味わえるでしょう。
サスペンションとボディの最適化により、乗り心地と操縦安定性が向上しています。さらに、静粛性を高める防音材の採用で、快適な走行を実現しました。さらに、全グレードが「サポカーS・ワイド」に該当し、高い安全性能を証明しています。
(参考:『CX-5(マツダ)の中古車一覧|新車・中古車の【ネクステージ】』)
まとめ
トルクは、回転運動を生み出す力として定義され、N・mやkgf・mなどの単位で表されます。日常生活では、ドアノブの開閉やペットボトルの開け締めなど、身近な場面で体験できます。
自動車の性能を語る上で、エンジン回転数との関係性を示すトルクと馬力は重要な指標です。ガソリンエンジンとディーゼルエンジン、さらに電気モーターではトルク特性が大きく異なり、それぞれの特徴を生かした車両開発が行われています。
高いトルクを体感してみたい場合は、GRヤリスやシビック TYPE R、CX-5などの国産車を検討するとよいでしょう。
▼ライタープロフィール
小波津健吾
高山自動車短期大学を卒業とともに国家2級整備士資格を取得。その後、整備士として実務経験を積み重ね自動車検査員資格を取り、民間工場で検査員として従事した経歴を持つ。現在はメカニックや検査員の知識と経験を活かし、主に車系のメディアで執筆している。
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