車のバッテリーの電圧が下がっている?測定方法や電圧低下時の対処法
自動車のバッテリー電圧が低下していると、トラブルに見舞われるリスクがあります。寿命が近い場合は、早めに交換する必要があるでしょう。しかし、自動車のバッテリーがどのような仕組みになっているのかよく分からないという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、自動車のバッテリーの仕組みや電圧について解説します。バッテリー電圧が低下したときの症状や充電する手段に触れつつ、交換時期の目安も紹介するので、メンテナンス時の参考にしてみてください。
※目次※
・バッテリーはエンジン停止時や始動時に電気を供給し、走行中はオルタネーターから電気を受け取って蓄積している。
・電圧の低下は、バッテリーの寿命だけでなく、オルタネーターの不具合も疑われる。
・バッテリー電圧が低下すると、エンジンのかかりが悪くなるなどの症状が現れる。
車のバッテリーの電圧が低下した
バッテリーはエンジン・カーエアコン・ライトなどさまざまな機器の動力源です。バッテリーの電圧が低下するとエンジンの始動が難しくなるため、電圧チェックは重要といえます。ここでは、バッテリー電圧の正常値と、充電する仕組みについて解説します。
バッテリー電圧の正常値は12V程度
バッテリー電圧の正常値は、通常時が12.5V~12.8V、エンジン始動後は13.5V~14.5Vです。オルタネーターの影響で高い電圧がかかります。バッテリー電圧が12.5Vを切ったら充電不足や劣化している可能性があるでしょう。
通常は走行中に電気を貯めている
バッテリーはエンジンの停止時や始動時は車に一方的に電気を供給しますが、走行中は電気を蓄積しています。バッテリーから電気が流れる仕組みは、次の通りです。
1.スタートボタンを押したりキーをひねったりすると、エンジンを動かすモーターにバッテリーから自動で電気が供給されてエンジンが回転する
2.バッテリーの電気でエンジン内にガソリンを噴射し、点火する
3.ガソリンの燃焼が始まり、エンジンが動き始める
エンジンを始動させるには、バッテリーにため込まれた電気が必要です。通常、走行時の電気はオルタネーターから供給されますが、不足したときにはバッテリーの電気で補う場合もあります。
車のバッテリーの電圧を測定してみよう
バッテリーの電圧を知ることは、コンディションを把握する上で重要です。電圧を計測する方法はさまざまですが、個人でできるものもあれば、業者に依頼したほうが良いものもあります。
直接つなぐタイプや配線が必要なものなど、それぞれに特徴があるので、適した方法を選びましょう。
1.電圧計をバッテリーにつなぐ方法
精度の高い電圧測定を行いたいならバッテリーに直接つなぎ、測るのがおすすめです。シガーソケットやOBD2コネクターは初心者でも扱いが簡単ですが、配線によって電圧がわずかに下がるため、やや正確性に欠ける面もあります。
直接つないでしまえば配線を通る際のロスが小さいので、より正確な電圧を測定可能です。常に接続して日常的に電圧を把握するための電圧計もありますが、点検などでバッテリーの電圧を計測する際も、直接つなぐタイプの計測方法を採用しています。
2.電圧計をシガーソケットにつなぐ方法
車内に設置されているシガーソケットに電圧計を差し込み、デジタル表示で電圧を知る方法です。特別な配線などが不要なので、機器や車両に詳しくない人でも手軽に電圧をチェックできます。
見やすい場所に設置して電圧を測れるように、延長ケーブルが付属しているタイプの製品も発売されています。
ケーブルについては専用というわけではないので、後から延長したくなったときは別途購入も可能です。USB充電機能が付いている電圧計を使うと、スマートフォンなどのバッテリーの充電もできます。
3.電圧計をOBD2コネクターにつなぐ方法
故障の診断を行えるスキャンツールをOBDコネクターに接続することで、簡易的に電圧を測ることもできます。
車両に装備されているOBD2専用のコネクターと診断機を接続して得られる情報の中には、電圧以外の測定値も含まれているので、一般的にプロが使用します。
OBD2は取り付けが義務化されているため、基本的にどの車両にも装備されています。最初から用意されているコネクターにケーブルをつなぐだけでさまざまな情報を取得できますが、バッテリー電圧については電圧計で直接測ったほうが正確です。
車のバッテリーの電圧が低下する主な原因
車のバッテリーの電圧が安定しない原因は、ひとつとは限りません。バッテリーが上がっていたりすでに寿命が近づいていたり、発電を担うオルタネーターのトラブルなどさまざまです。ここでは、バッテリーの電圧が不安定になる主な3つの原因について解説します。
バッテリーが上がりそうになっている
電圧が極端に下がっている場合は、バッテリーが上がっている可能性があります。車が走るとバッテリーは充電されますが、停車中は少しずつ放電するのが特徴です。
長期間乗らないままだと、バッテリーが上がる確率は高いでしょう。新車でも小まめに乗らない車は要注意です。
また、ライトをつけたまま気付かずに放置してしまうと、バッテリーが上がる原因になります。消灯しているかどうかを確認することが大切です。
バッテリーが寿命を迎えた
長い年数が経過して古くなると、バッテリーは寿命を迎えます。劣化したバッテリーは充電効率が下がり、出力も低下するため交換が必要です。
一般的に2年~3年がバッテリーの寿命といわれているので、年数が経過してきたと感じたら車検の前などの機会に交換しておくとよいでしょう。車のコンディションを維持することは、快適な走行と事故の防止に直結します。
オルタネーターに不具合がある
車に必要な電気を送る「オルタネーター」に不具合が見られる場合も、電圧が不安定になりやすい傾向にあります。発電した電気はそのまま使うこともできますが、バッテリーへの蓄電も機能のひとつです。
オルタネーターにトラブルが起きると車が走るために必要な電気の共有がストップし、走行できなくなります。
バッテリーの充電はオルタネーターの故障後わずかな距離を走っただけで尽きてしまうので、ロードサービスなどを利用して業者へ持ち込み、点検を依頼しましょう。
車のバッテリーの電圧が低下したときの症状
車のバッテリーが劣化すると、ヘッドライトが暗くなったり、エンジンがかかりにくくなったりします。また、電装品の動きにも影響するケースがあるでしょう。ここでは、バッテリーの電圧が低下した場合の症状を紹介するので、参考にしてみてください。
ライトの明るさが下がる
エンジンが停止している場合、車の装備品はバッテリーから電源供給によって作動します。電源電圧が低下すると電装品のパフォーマンスが下がるので、バッテリーの異常に気付けるでしょう。
例えばヘッドライトなどの灯火類の明るさで判断することが可能です。通常よりもライトが暗い場合は、バッテリーの電圧低下が疑われます。
ただし、バッテリーの電圧低下だけが暗くなる原因ではありません。ライトのバルブが劣化しているケースもあります。参考程度に試してみるとよいでしょう。
エンジンがかかりにくく感じる
バッテリーの電圧低下を判断するのに適しているのは、エンジンの始動時です。エンジンはスターターモーターによって回転をはじめますが、バッテリーが劣化しているとかかりにくくなることから、交換時期の可能性が高いといえます。
もしくは充電不足になっていることもあるでしょう。スターターモーターの作動音に途切れがあるなど、違和感を覚える場合は、バッテリー電圧をチェックしてみてください。
ただし、スターターモーター自体が壊れている可能性もあるので、プロに判断してもらうことをおすすめします。
パワーウィンドウの動作が遅くなる
自動車には、さまざまな場所にモーターが配置されています。例えば、ワイパーやパワーウィンドウ、電動スライドドアなどです。これらは多くの電力を消費するので、電圧が低い場合は作動に支障をきたします。
エンジンが停止している状態でパワーウィンドウを操作し、窓ガラスが上がるときの動きが明らかに遅いのであれば、バッテリー電圧が低下しているかもしれません。
パワーウィンドウのモーターに不具合があったり、窓ガラスを上げ下げするレール部分の滑りが悪かったりする場合もありますが、ひとつの判断基準となるでしょう。
車のバッテリーを充電する3つの手段
バッテリーの充電には複数の方法があります。定期的に車に乗るならオルタネーターの発電に頼っても構いませんが、カーバッテリー充電器を使ったり、業者へ依頼したりするのも選択肢のひとつです。ここでは、自動車のバッテリーを充電する3つの手段を紹介します。
車を走行させて充電する
ドライブ中の車は、オルタネーターが発電した電気をバッテリーにため込みます。そのため、「一定以上の速度で、ある程度の距離を走る」方法で充電が可能です。より効率を高めるなら、エンジン回転数を増やすとよいでしょう。
バッテリーに十分な電気を供給するには、「1週間に1回を目安に、時速50km~60kmの速さで20分~30分走行する」のをおすすめします。この条件を満たすのが難しいときは、アイドリング状態でも充電は可能です。
ただし、エンジン回転数が少ないので、必要最低限の充電量しか確保できないというデメリットもあります。バッテリーが劣化して古くなった場合、車を走らせたりアイドリングしたりして充電する方法は十分な充電が難しくなるのでバッテリーを交換しましょう。
カーバッテリー充電器で充電する
カー用品専門店などで購入できる「カーバッテリー充電器」を活用すると、業者を頼らずに自分で充電できます。
機種によって使い方は異なるので、取り扱いはマニュアルなどを参照して慎重に行うことが大切です。一般的な作業方法としては、次のように行うことが多いでしょう。
1.コンセントがあるエリアに車を寄せて、自身の車に対応しているカーバッテリー充電器とブースターケーブルを用意する
2.ボンネットを開けてバッテリーを確かめたら、赤いケーブルを赤色のプラス極、黒いケーブルを黒色のマイナス極に接続する
3.コンセントに充電器を挿して電源をオンにし、充電器のアンペア数を選択する
4.電圧と充電量を小まめに確認しながら、バッテリーの残量が90%以上になったら充電を終える
業者に依頼をして充電してもらう
個人で充電作業を行わず、ディーラーなどの専門業者に依頼する方法もあります。思わぬタイミングでバッテリーが上がってしまったときなど、トラブルの際にはプロに依頼すると適切な対処をしてもらえるでしょう。
自分で充電しようとしてもうまく充電できないなど、バッテリーの劣化や寿命が迫っていると予想される場合にも業者に依頼するのがおすすめです。バッテリー交換が必要になれば個人で適切に対応するのは難しいので、専門の整備士を頼りましょう。
車両の他の部分も一緒に点検してもらえるので、他にも不具合があれば発見できます。定期的にメンテナンスができていない場合などは、安全確認も兼ねて充電を依頼するのもおすすめです。
電圧が下がった車のバッテリーを交換する時期の目安
ここでは、バッテリーを交換すべきか判断するための基準を紹介します。バッテリーの劣化はどうしても避けられないため、交換時期の目安を把握しておくことが大切です。バッテリーが上がってしまうと車を使用できなくなります。
2年~5年が時期の目安
バッテリーの寿命は、車の使用状況や製品などによって変動します。一般的な目安は、エンジンのみの自動車の場合で2年~5年程度です。
ただし、アイドリングストップを搭載している場合は、バッテリーの負担が大きいため長くても3年で交換することになるでしょう。
ハイブリッド車には、走行用バッテリーの他にシステムを起動するための補機バッテリーが搭載されています。この補機バッテリーは、エンジンのみの自動車よりも寿命が長い傾向にあります。4年~5年程度持つことがほとんどでしょう。
保証期間を参考にする方法もある
バッテリーの寿命の判断基準として、保証期間を目安に交換するのもひとつの方法です。バッテリーを販売する多くのメーカーは、多くの場合、製品保証を付けています。
2年もしくは4万kmなど、パッケージや保証書で確認できるでしょう。この期間が過ぎたら交換することで、エンジンが始動できないなどのトラブルを回避しやすくなります。
バッテリーはワイパーやエンジンオイルなどと比べると、比較的高価な消耗品なのでギリギリまで使いたいものですが、安心して車を使用したい場合は定期的に交換することをおすすめします。
車のバッテリー寿命の延ばし方
自動車のバッテリー寿命は平均2年~3年とされています。しかし、使い方によっては寿命をさらに伸ばすことも可能です。ここでは、バッテリーの寿命を伸ばすために以下4つのテクニックを紹介します。
・週に1度は運転する
・エンジンが切れた状態で電装品を使用しない
・なるべく長くエンジンをかける
・バッテリーの定期点検をする
週に1度は運転する
運転せずに放置しているとバッテリーの電力は自然と放電されてしまいます。バッテリーは運転することで充電されるため、週に1度を目安に運転しておきましょう。
エンジンが切れた状態で電装品を使用しない
バッテリーの電力不足の原因になるため、なるべくエンジンが停止した状態でスマートフォンの充電などをしないように気を付けましょう。
またエンジンがかかった状態でも、1度に複数の機器を使用するとバッテリーにかかる負荷が大きくなるため、必要最小限で使用するのが有効です。
なるべく長くエンジンをかける
エンジンが停止中、エンジンコンピューターやオーディオなどのバックアップのために、バッテリーの電気を少しずつ消費します。また、エンジンを始動する際は、スターターモーターを回すために大きな電力が必要です。
そのため、車を長期間放置している場合や、走行距離が少ない場合は充電が追いついていない可能性があります。
これを防ぐには、なるべく長くエンジンをかけておくことが大切です。車の使用頻度が少ない場合は、週に1度など、スケジュールを決めて定期的に充電してあげましょう。
バッテリーの定期点検をする
バッテリーは温度の影響を受けやすい仕様のため、夏場や冬場は気温によってバッテリーに影響が出る可能性があります。バッテリーの劣化は見た目では分かりにくいため、季節の変わり目など定期的にバッテリーの点検をしておくとよいでしょう。
まとめ
車のバッテリー電圧を定期的にチェックすることで、劣化しているかどうかの判断がしやすくなるでしょう。また、充電不足やオルタネーターの発電不良に気付けるかもしれません。
ただし、電圧だけで交換時期かどうか判別するのは難しいので、プロに点検を依頼することが大切です。バッテリーを長持ちさせるためにも、車を長期にわたり放置することは避けましょう。週に1度でも充電すると、バッテリー上がりの対策にもなります。
▼ライタープロフィール
小波津健吾
高山自動車短期大学を卒業とともに国家2級整備士資格を取得。その後、整備士として実務経験を積み重ね自動車検査員資格を取り、民間工場で検査員として従事した経歴を持つ。現在はメカニックや検査員の知識と経験を活かし、主に車系のメディアで執筆している。
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