全損車両は保険会社に引き上げられる?過失割合による違いや有用な特約も
大切な愛車が事故で全損した場合、どのように対応すれば最善なのでしょうか。事故や災害による全損は突然訪れ、車両の扱いや保険の手続きに関する決断を迫られることになります。
事故後の混乱した状況でも、適切な判断をするための知識を持っておくことで、最大限の補償を受け取り、次の一歩を踏み出す準備ができるようになるでしょう。この記事では、全損車両の取り扱いに関する重要ポイントと、適切な対応方法を紹介していきます。
※目次※
3.保険会社に引き上げられる全損時に、活用すべき自動車保険の特約
4.全損事故で保険会社に引き上げられた後の保険手続きと車両買い替えの流れ
・全損には「物理的全損」と「経済的全損」の2種類があり、保険金の支払い方法や車両の取り扱いが異なる。
・車両保険を使って保険金全額を受け取ると、車両の所有権は保険会社に移転し引き上げられるが、相手の過失がある事故では対物賠償保険から補償を受ければ所有権を維持できる可能性がある。
・全損時に活用すべき特約には、新車特約や全損時諸費用特約、代車費用特約などがあり経済的負担を軽減できる。
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保険会社の引き上げ対象に?全損とは何か
事故車両の全損認定には、「物理的全損」と「経済的全損」という2つの概念が存在します。それでは、それぞれどのような状態を指すのでしょうか。これらの違いを理解することで、保険会社とのやりとりや全損車両の取り扱いについての知識が深まるでしょう。
保険会社の引き上げ対象?物理的全損の定義と判断基準
物理的全損とは、事故によって車が修理不可能な状態まで損傷した状況を指します。車体の大部分が破損したり、フレームに重大な損傷があったりすると、物理的全損と判断されるのが一般的です。
火災による車両焼失や、水没により電気系統やエンジンに致命的なダメージを受けた状態、盗難車も物理的全損に該当します。多くのドライバーが「全損」と聞いて想像するのは、物理的全損のことが多いでしょう。
物理的全損と判定された車両は走行が不可能なため、ほとんどの場合解体処分となります。保険会社は、物理的全損と判断した場合、修理ではなく保険金の支払いによる解決を提案するでしょう。
保険会社の引き上げ対象?経済的全損の定義
経済的全損とは、修理費用が車の市場価値(時価額)を上回った場合に認定される状態です。事故車両の損害額は、「車両の時価相当額+買い替え諸費用」で算出されます。
時価相当額の判断には、「レッドブック」や中古車販売サイトの情報が参考にされるでしょう。同一車種・年式・型、使用状態・走行距離の類似した中古車の相場が基準となります。
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保険会社による全損車両の引き上げ対応と法的根拠
全損車両の引き上げは、保険金支払いに伴う権利移転という法的根拠に基づいて行われます。車両保険と対物賠償では引き上げ対応に大きな違いがあり、どのような処理が行われるかは事故の過失割合によって変わるでしょう。
全損判定時に保険会社と適切に話し合いができるようになるためにも、適切な知識を身に付けることが大切です。
なぜ保険会社は全損車両を引き上げるのか
全損車両を保険会社が引き上げるのは、保険金支払いに伴う法的な権利移転の仕組みによるものです。車両保険で保険金を全額受け取ると、車の所有権は保険会社に移ります。
保険会社は、残存価値のある車両を引き取り、サルベージ(残存物)として売却することで損失の一部を回収する仕組みです。所有権が移った車両は、勝手に修理・廃車にできません。
愛着ある車を手放したくない場合は、保険金請求前に保険会社と相談しましょう。場合によっては、一定条件で車両を手元に残せる可能性もあるかもしれません。
自分の保険会社の車両保険と相手の対物賠償での全損車両引き上げ対応の違い
自分の車両保険使用時は、保険金を満額受け取ると車両の所有権が保険会社に移転し、引き上げられます。
一方、相手にも過失がある事故で、相手の対物賠償保険から補償を受ける場合は、所有権は自分に残ることを覚えておきましょう。ただし、相手の過失割合が100%で、時価額全額の賠償を受けた場合は、所有権が相手の保険会社に移る点に注意が必要です。
また、車両保険では市場価格相当の支払いですが、対物賠償では修理費用も請求でき、休業損害なども補償対象となることがあるでしょう。
なお、相手に過失がない場合や過失割合が低い場合は、対物賠償からの十分な補償が得られないケースもあるため、事故状況に応じた保険金請求方法の選択が重要です。
過失割合別の全損処理フローと保険適用のポイント
過失0%の「もらい事故」なら、相手の対物賠償保険から時価額を受け取れますが、車両の所有権は相手の保険会社に移ります。過失100%の「自損事故」では、自らの車両保険を使うしかなく、保険金受け取りと引き換えに車両は保険会社に引き上げられる決まりです。
過失が双方にある場合は、割合に応じて保険金請求先を検討します。例えば、自分の過失が30%なら、相手から70%分の賠償を受け、残りを自分の車両保険で補うのが通常です。
この際、自己負担額が設定されていても、相手からの賠償金がそれを上回れば実質的な負担はゼロになるでしょう。相手が「対物全損時修理差額費用特約」に加入していれば、修理費用と時価額の差額も補償される可能性があります。
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保険会社に引き上げられる全損時に、活用すべき自動車保険の特約
全損事故が発生した際、保険特約が経済的負担を軽減する強力なサポートとなります。ここでは、新車特約や代車費用特約、車両地震・噴火・津波危険特約などについて詳しく見ていきましょう。特約を活用することで、新車への円滑な買い替えが可能になります。
全損で保険会社に引き上げられる際に新車購入時の金額を補償「新車特約」
車両保険は時価額に基づいて補償されるため、購入から時間が経過するほど、受け取れる保険金は少なくなるのが通常です。しかし、新車特約があれば、全損時に新車購入時と同等の金額が補償されます。
例えば、300万円で購入した車が全損になった場合、通常なら経年劣化による価値減少分が差し引かれますが、新車特約があれば300万円の補償を受けられるわけです。これにより、同等の新車への買い替えが容易になります。
ただし、特約付加で保険料は高くなるため、補償内容と保険料のバランスを考慮して加入を検討することが重要です。
保険会社に引き上げられる全損に特化した「全損時諸費用特約」
全損時諸費用特約に加入していれば、車両が全損と認定された場合に保険金が支払われます。車両保険金とは別に、廃車手続きや新車購入時などの諸経費をカバーするためのものです。
この特約による補償金額は、車両保険金額の10%に相当する額(上限・下限あり)で、全損に伴う追加出費の負担を軽減できるでしょう。
ただし、この特約は車両保険をセットしている契約にのみ付帯可能です。また、新車特約の再取得時諸費用保険金が支払われる場合には、全損時諸費用保険金は重複して支払われない点に注意しましょう。
全損で保険会社に引き上げられたときの代車活用に「代車費用特約」
全損処理中は、代替交通手段の確保が課題です。代車費用特約があれば、車両保険対象の事故により損害を受けた際、修理期間中のレンタカー費用が補償されます。
1日あたりの支払限度額は、保険会社により異なりますが、5,000円~1万円程度が一般的です。補償期間は最大30日間が目安ですが、修理完了や代替車両取得で短縮されることがあるでしょう。
一部の保険会社では、提携修理工場を利用すれば代車が無料提供されますが、代車不足や希望車種がない場合にこの特約が役立ちます。
自然災害で全損して保険会社に引き上げられたら「車両地震・噴火・津波危険特約」
車両地震・噴火・津波危険特約は、通常の車両保険では補償されない自然災害による被害をカバーするのが魅力です。地震で道路が崩壊して車が巻き込まれたり、火山噴火の飛石で損壊したり、津波で水没したりした場合に適用されます。
この特約では車が全損と判定されたとき、一時金として50万円程度が支払われることが多いでしょう。ただし、車両保険の金額が50万円未満の場合は、その保険金額と同額になることがある点に注意が必要です。
通常の全損と異なり、特約による一時金を受け取っても車の所有権は変わらず、引き上げられません。利用するには、車両保険への加入が前提条件です。
また、大規模地震対策特別措置法により、地震発生後に特約を追加することが制限される可能性もあるため、事前の加入が欠かせません。
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全損事故で保険会社に引き上げられた後の保険手続きと車両買い替えの流れ
全損事故の後には、さまざまな手続きや選択肢について検討する必要があります。保険会社による車両引き上げ後の流れを理解することで、保険等級の維持や次の車両への円滑な移行が可能になるでしょう。また、最適な買い替えのタイミングを知ることも大切です。
全損事故で保険会社に引き上げられた後は「保険中断証明書」を発行しよう
次の車を購入するまでに時間がかかる場合は、「保険中断証明書」の取得が有効です。
最長10年間は現在の等級を保持でき、全損で保険会社に車両が引き上げられた場合でも、この証明書があれば新車購入時に等級を引き継げます。ただし、取得には7等級以上であることが必要です。
取得手続きは保険会社への連絡から始まり、必要書類をそろえて申請します。取得後は大切に保管し、新たな車購入時に提出することで等級が継続されるでしょう。保険料に大きく影響する等級を守るためにも、中断証明書制度を活用することが大切です。
全損事故で保険会社に引き上げられた後の適切な車両買い替えタイミング
全損事故で保険金を受け取った後は、次の車両購入に向けた計画的な行動が肝心です。保険金の支払いは通常、全損認定から1か月程度かかります。
車両購入のタイミングは、資金面のめどが立った段階が最適です。全損車両が引き上げられた直後に慌てて購入する必要はなく、じっくりと希望条件に合った車を探しましょう。
中古車選びでは、複数の販売店を比較検討することが大切です。大手中古車販売店なら、豊富な在庫から条件に合った車を見つけやすく、保証制度も充実しているでしょう。
新車購入を検討する場合は、納期の確認が必要です。車種によっては数か月待つこともあり、その間のレンタカー費用も考慮して計画を立てましょう。
新たな保険契約時には、以前の補償内容を見直し、より自分のニーズに合った特約を選択することも重要です。
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まとめ
全損車両の対応では、過失割合を考慮した選択が重要です。車両保険を使うと保険会社に所有権が移り、引き上げが基本となります。一方、相手に過失がある場合は対物賠償での請求も選択肢となり、車両の所有権を保持できる可能性が高まるでしょう。
また、新車特約や全損超過修理特約などの特約活用も重要です。保険の手続きや車両買い替えのタイミングなど、保険会社による引き上げ後の対応も参考にしてください。
▼ライタープロフィール
鈴木祐貴
車と音楽、旅と猫を愛するライター。多様なWebメディアの編集・ディレクション経験を重ね、2018年よりフリーランスとなる。
現在もさまざまなジャンルの編集をする傍ら、車関連のオウンドメディアや車の税金に関するコンテンツなどの編集経験を生かし、ライターとして車の魅力・おもしろさも発信中。
バックパックひとつでふらりと旅に出るのが好きだが、いずれはキャンピングカーで気ままに世界中をロードトリップしようと思っている。
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よくある質問
Q.事故で廃車になった場合、保険は幾らもらえる?
A.事故による廃車時の補償金額は、保険契約内容と事故状況で決まります。車両保険加入者は契約締結時に設定した保険金上限額まで補償を受けられるのです。加害者側からの賠償では、修理可能な場合は修理費用が支払われますが、物理的に修理不可能または修理費が車両価値を上回る全損の場合のみ時価額を請求できます。
Q.車両保険は廃車にした場合どうなる?
A.車両保険加入車両の廃車では、状況に応じて対応が異なります。交通事故による損傷で処分する際は車両保険による補償金の受給が可能です。任意保険については車両処分後に契約終了手続きを行い、終了日から契約満了まで1か月超の期間があれば保険料を払い戻せます。一方で、自賠責保険については車両処分時での契約解除が必要です。
Q.事故車の廃車にかかる費用は?
A.事故車の処分費用は選択する方法によって変動します。個人で手続きする際は、レッカー料金5,000円~1万円程度、解体費用0円~2万円程度、各種手数料などが必要です。また、購入時にリサイクル料金を支払っていない場合は、廃車時に支払います。 一方で、廃車買取の専門業者を活用すれば費用を抑制できます。損傷車両を素材や部品として活用し収益を上げているため、各種経費の負担が可能です。
Q.車の修理と廃車の判断基準は?
A.修理費用と車両の状況、費用対効果などを複合的に検討します。復旧費用が市場価値を超過する場合や構造体への損傷時には廃車がよいでしょう。外装の軽微な傷は比較的安価ですが、動力系統や走行装置にまで影響する場合は高額の修理費用が発生します。また、走行距離の多い車は、修理後に消耗品の定期的な交換が必要になるでしょう。
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